千葉県船橋市に住む高校1年生のAさんは、同じ学校に通う同級生のVさんと折り合いが悪く、学校で顔を合わせるたびに悪態をついていました。
それが原因で、AさんはVさんから突然殴り掛かられ、身の危険を感じると共に腹を立てました。
そこで、AさんはVさんの身体を掴んでその場に引き倒し、馬乗りになってVさんを数発殴りました。
これによりVさんは全治1か月の怪我を負い、Aさんは傷害罪の疑いで船橋警察署にて取調べを受けることになりました。
このことを知ったAさんの母親は、弁護士に前科がつくことになるのか聞いてみました。
(フィクションです)
【傷害罪と正当防衛】
上記事例において、AさんはVさんに暴行を加えて怪我を負わせていることから、傷害罪が成立すると考えられます。
ですが、Aさんがこうした行為に及んだ原因の一つとして、Vさんが突然Aさんに殴り掛かったことが挙げられます。
この場合、Aさんの行為が正当防衛に当たるとして、傷害罪の責任を免れることはないのでしょうか。
正当防衛については刑法に規定されています。
刑法(一部抜粋)
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
上記事例は、正当防衛の成立を認めるうえで問題となる点がいくつかあります。
まず、AさんはVさんに突然殴り掛かられていることから、上記条文の「急迫不正の侵害」に当たると言えそうです。
しかし、もともとVさんが殴り掛かってきた原因は、AさんがVさんに対して悪態をついたことにあります。
この場合、常識的に考えて正当防衛を認めるのは抵抗があるように思え、侵害が「急迫」、すなわち突然のものだったと言えるかどうか疑問視されます。
次に、AさんはVさんを引き倒したうえ、馬乗りになって数発殴っています。
正当防衛は本来犯罪に当たる行為を正当化するものであり、「やむを得ず」とあるように必要最小限度の行為でなければなりません。
この観点から、自己防衛の名目で馬乗りになって複数回殴打したという事実は、否定的に評価される可能性が少なからずあります。
その場合、もはや正当防衛の範疇にはとどまらず、過剰防衛として場合により刑の減軽または免除がなされるに過ぎません。
以上から、Aさんの行為は正当防衛と見られず、原則どおり傷害罪が成立する可能性があるでしょう。
【前科はつくのか】
「前科」という言葉には複数の意味がありますが、多くの方が心配されている「前科」は、犯罪を起こして何らかの刑罰を科された経歴のことではないかと思います。
この前科は、普段の生活において公にされる情報ではありませんが、一定の範囲で公的機関が利用することがあります。
また、仮に知人などに知られた場合、信用や名誉を損なうおそれもあるでしょう。
刑事事件を起こした者が20歳未満である場合、その事件の殆どは少年事件として扱われます。
少年事件の場合、基本的に前科が付くことはありません。
なぜなら、少年事件の最終的な処分は保護処分と呼ばれるものであり、刑罰とは全く異なるものだからです。
一般的によく知られている少年事件の処分として少年院送致が挙げられますが、こちらも保護処分の一種であって刑罰ではありません。
少年事件を起こした記録については、検察庁などには残るものの、その後生活する中で前科ほど影響を及ぼすものではありません。
たとえば、過去に少年事件を起こしたからといって、国家資格の取得制限を受けたり、選挙権が行使できなかったりすることはありません。
ですので、仮に少年事件を起こして何らかの処分が下されたからといって、そのことを過度に気にする必要は基本的にないでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件に強い弁護士が、前科を含む様々な疑問に真摯にお答えします。
お子さんが傷害罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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