強盗罪と執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ケース】
千葉県市川市に住むAさんは,お金がなくて困っているという相談をBさんにしたところ,Bさんから強盗の誘いを受けました。
強盗の内容は,道端を歩く見知らぬ女性をターゲットとして,ペティナイフで脅して金銭を奪い取るというものでした。
AさんとBさんは,この計画どおりに犯行に及び,手に入った金銭およそ30万円を折半しました。
後日,Aさん宅を行徳警察署の警察官が訪ね,Aさんを強盗罪の疑いで逮捕しました。
Aさんの母親から依頼を受けた弁護士は,なんとか被害者と示談を行って執行猶予を目指すことにしました。
(フィクションです。)
【強盗罪について】
刑法(一部抜粋)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
暴行または脅迫を手段として他人の財産を奪取した場合,強盗罪が成立する可能性があります。
たとえば,刃物を他人に差し向けて「金を出さないと殺すぞ」などと言い,その他人から金銭を受け取るというのが典型例です。
強盗罪によく似た罪として恐喝罪が挙げられます。
恐喝罪について定めた刑法249条を見ると,「人を恐喝して財産を交付させた者」が恐喝罪に当たるとされています。
ここでいう「恐喝」とは,財産の交付を目的とする暴行または脅迫であることから,強盗罪と成立要件が同じのように思えます。
これらの区別は,暴行または脅迫が相手方の反抗を抑圧するに至ってるかどうかという判断基準によってなされると考えられています。
誤解を恐れずに言えば,暴行・脅迫の程度が強ければ強盗罪,弱ければ恐喝罪ということになります。
今回のケースでは,AさんとBさんが被害者にペティナイフを示して脅し,これにより被害者から金銭の交付を受けています。
ペティナイフが高い殺傷能力を持つ凶器であることを考慮すれば,Aさんらの脅迫は相当に強いものだと評価できます。
そうであれば,Aさんらには恐喝罪ではなく強盗罪が成立すると考えられます。
【執行猶予の可能性はあるか】
執行猶予は,裁判で有罪となった場合に言い渡される刑の執行を一定の期間猶予するという裁判所の判断を指します。
事件の重大性や事件後の対応などの様々な事情を考慮し,いったん刑の執行を見送って社会で更生の機会を与えるべきだと考えられる場合に下されるものです。
執行猶予を付けるべきかどうかは個々の事案毎に判断されるので,一概に付く,あるいは付かないと言い切ることはできません。
本記事をお読みの方の中には,「強盗事件は重大だから執行猶予が付くことはないんじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと,以下の述べるように必ずしもそうとは限りません。
前提として,執行猶予を付するためには,言い渡された判決の内容が懲役刑であれば3年以下,罰金刑であれば50万円以下でなければならないという規定があります。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役であることから,執行猶予を付することができる範囲に刑が収まることはないように思えます。
ですが,裁判では必ず上記範囲内で刑が科されるというわけではなく,刑の減軽を認めるべき事情があれば法定刑を下回ってもよいとされています。
たとえば,被害者との間で示談が成立した場合,いわゆる酌量減軽(刑法66条。「情状酌量」とも)を認めるべきだとして刑が減軽される余地が出てきます。
有期懲役の減軽についてはその期間を2分の1にすると定められているので,仮に酌量減軽が認められると,強盗罪を犯した際に言い渡される刑の下限は2年6ヶ月の懲役となります。
そうしたケースについては,裁判官の判断で執行猶予が付く可能性が出てくるのです。
ただ,一口に強盗罪といってもその内容は様々なので,示談が成立したからといって必ず執行猶予がつくとは限らない点には注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が、執行猶予の獲得を目指して手を尽くします。
ご家族などが強盗罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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