文書偽造罪で自首
千葉県香取郡多古町に住むAさんは、かつての交際相手であるVさんとの婚姻したことにし、Vさんを自分だけのものにしようと考えました。
そこで、勝手にVさんの署名および押印を行うなどし、必要事項を記入した婚姻届を役所に提出しました。
その夜、Aさんが自身と同じことをした人がいないかインターネットで調べてみると、「有印私文書偽造罪」という文字が目に入りました。
急に怖くなったAさんは、香取警察署に自首すべきか弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
【文書偽造罪について】
「偽造」という言葉は、権限のない者が勝手に文書などを作成したり内容に変更を加えたりするという意味で用いられることが多いかと思います。
ですが、刑法においては、その「偽造」を更に細かく分け、それぞれにつき行為の重大性に応じた罪の重さを定めています。
以下では、他人名義の文書を作成するという意味での偽造を罰する、文書偽造罪という名称の罪について説明します。
文書偽造罪は、その名のとおり文書を「偽造」した場合に成立する可能性のある罪です。
ここでの「偽造」とは、①権限がないにもかかわらず他人名義の文書を作成すること、あるいは②文書の作成者と名義人の人格の不一致を生じさせること、と説明されます。
②については、「作成者」が文書を実際に作成した者、「名義人」が文書から読み取れる意思などを持っているとされる者とされています。
そのため、上記①②の定義は、基本的には同一の行為について2通りの説明をしたに過ぎないと言えます。
上記事例では、AさんがVさんの署名および押印を行うなどして婚姻届を作成しています。
この場合、Aさんが勝手にVさんの署名などを行って連名の文書を作成している点で①の定義に当たると考えられます。
また、婚姻届を作成したのはAさんである一方、婚姻届から読み取れる意思の主体はVさんも含まれることから、②の定義にも当たると考えられます。
そうすると、Aさんの行為は「偽造」に当たることから、文書偽造罪が成立すると考えられます。
そして、婚姻届は「私文書」に当たり、なおかつVさんの署名や押印を用いていることから、Aさんに成立するのは有印私文書偽造罪だと考えられます。
法定刑は3か月以上5年以下の懲役であり、罰金が選択される余地がない点で重大な罪と言えるでしょう。
ちなみに、他に成立する可能性のある罪としては、偽造有印私文書行使罪、電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪などがあります。
【自首の意味】
自首とは、捜査機関に出頭して自らの犯罪事実を申告し、その処分を委ねる行為を指します。
時たま耳にするこの「自首」という言葉ですが、法律上の用語として刑法にも記載されています。
刑法が定めるところによると、「自首」が成立した場合、裁判官はそのことを理由として刑を減軽することができます。
刑の減軽には、死刑を懲役にする、無期懲役を有期懲役にする、懲役の長さや罰金の額を半分にする、などの大きな効果があります。
ただし、自首を行ったからといって、必ずしも刑の減軽がなされるわけではない点に注意が必要です。
まず、自首による刑の減軽を行ううえでは、捜査機関が事件や被疑者を把握する前に自首しなければなりません。
つまり、既に事件と被疑者の特定に至った段階で自首をしても、刑の減軽を可能にする自首とはなりません。
また、自首の成立は、飽くまでも刑の減軽をする「ことができる」と定められているに過ぎません。
大半の場合は認められるとしても、法律上は一応認められないこともありえます。
ちなみに、仮に上記2点を満たさず刑の減軽が認められなかったとしても、量刑を決めるうえで自首に及んだことが多少なりとも評価されることはあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件のプロである弁護士が、自首に関するご相談も真摯にお聞きします。
文書偽造罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
香取警察署までの初回接見費用:43,100円