傷害致死罪で正当防衛

Aさんは、かつて交際していたVさんに別れを切り出し、交際の解消を頑なに拒むVさんから距離を置きました。
それから数カ月経ったある日、Aさんが友人の紹介で知り合った女性Bさんと千葉県船橋市内を歩いていたところ、目の前にカッターナイフを持ったVさんが現れました。
Aさんはすぐに逃げよう思いましたが、Bさんがハイヒールを履いていたことから逃げ遅れることを懸念し、持っていた傘をVさんに数回突き当てました。
これにより、Vさんは顔面や上半身に傷を負い、Aさんは傷害罪の疑いで船橋東警察署にて取調べを受けることになりました。
その後、Aさんによる傷害が原因でVさんが死亡したため、Aさんの捜査は傷害致死罪で進められることになりました。
そこで、Aさんは弁護士に正当防衛を主張できないか相談しました。
(フィクションです)

【傷害致死罪について】

人の身体を傷害し、結果的にその人が死亡した場合、傷害致死罪が成立する可能性があります。
同じく人の死亡を生じさせる罪として殺人罪がありますが、殺人罪と傷害致死罪とでは決定的に違う点があります。
それは、行為時における殺意の有無という点です。
殺人罪の場合、暴行を加えた時点において殺意があり、思いどおり殺害を遂げることが成立要件となっています。
それに対して、傷害致死罪の場合、暴行の際に殺意こそなかったものの、暴行が原因となって結果的に死亡が生じることが成立要件となっています。
最終的に生命が侵害されている点は共通ですが、問われるべき責任の重さという観点から明確に区別されているのです。

傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役(上限20年)です。
一方、殺人罪の法定刑は①死刑、②無期懲役、③5年以上の有期懲役のいずれかであるので、その差は相当なものと言うに値します。
ここで注意すべきは、殺意の有無が一見して明確に分からないことから、捜査においていずれを疑われるかが流動的な場合がありうることです。
これは「殺すつもりじゃなかった」と供述すれば済むほど単純な問題ではなく、最悪の場合殺人罪として不相応に重い刑罰が下されかねません。
こうしたリスクがあることに十分注意し、弁護士に相談して入念に主張を検討することが重要となるでしょう。

【正当防衛として無罪の主張をするには】

日常生活でも耳にするように、「正当防衛」という言葉自体は広く周知されていると言っても過言ではありません。
ですが、正当防衛というのは、本来違法な行為を公的に適法と認めるという重大な効果を持つものです。
そのため、その成立要件は厳しく、時には裁判においてその成否が激しく争われることも珍しくありません。

正当防衛の主張をした場合、「正当防衛の名目で加害に及ぶことが必要だったか」という点があらゆる角度から検討されることになります。
たとえば、本当に身の危険があったか、単に機会を利用して痛めつけたかっただけではないか、複数回反撃する必要はあったのか、などです。
こうした諸事情は、動揺、恐怖、怒りといった人間の心理も関わってくるものであり、そのことも踏まえて的確な主張をしなければなりません。
ですので、もし正当防衛の主張により無罪を目指すのであれば、腕の立つ弁護士に依頼することを強くおすすめします。
有罪か無罪かは人生の明暗を分けると言っても過言ではないので、ぜひ慎重にご検討ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件の経験豊富な弁護士が、正当防衛のような難しい主張も可能な限り検討します。
ご家族などが傷害致死罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

初回法律相談:無料

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