Aさんは、千葉県千葉市若葉区に事務所を置くNPO法人Xの代表として、千葉県内の自然保護活動に取り組んでいました。
Xは主に財団からの助成金や市民からの寄付金を財源としており、Aは代表としてそのお金の管理を行う立場にありました。
あるとき、千葉東警察署は、匿名の通報でAさんがXのお金を私的に費消していることを知り、横領事件として捜査を進めました。
そして、嫌疑が濃厚となったことから、Aさんは業務上横領罪の疑いで逮捕されました。
逮捕の知らせを受けたAさんの母親は、弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
【横領罪について】
横領罪は、その名のとおり他人の物を「横領」した場合に成立する可能性のある罪です。
ニュースなどで横領事件が取り上げられることは珍しくないため、どのような罪なのかなんとなく想像がつく方も多くいらっしゃるかと思います。
以下では、横領罪の種類や「横領」の意味などについて少し詳しく見ていきます。
まず、横領罪には、①委託物(または単純)横領罪(5年以下の懲役)、②業務上横領罪(10年以下の懲役)、③占有離脱物横領罪(1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料)の3種類が存在します。
これらのうち特に軽いのは③で、よくあるのは放置自転車を自分のものにしたというケースです。
これとは異なり、①②は自己が占有する他人の物を「横領」した場合に成立しうる罪です。
「自己が占有する他人の物」とは、簡単に言えば人から管理を頼まれるなどして預かっている物のことです。
単に事実上利用や処分ができるだけでなく、そうしたことができる権限を与えられていることが重要になってきます。
上記事例のAさんは、NPO法人Xの代表としてXのお金を管理する立場にあります。
この場合、AさんはXのお金を占有していると認められる可能性が高いでしょう。
もしこの占有が認められなければ、横領罪ではなく窃盗罪が成立すると考えられます。
次に、「横領」とは、不法領得の意思を発現する一切の行為を指すとする見解が支配的です。
簡単に言えば、依頼者を裏切って、託された物をまるで自分の所有物かのように扱おうとすることです。
お金を私的に消費する、預かった物を売却する、他人に貸す、といった行為が「横領」に当たると考えられます。
業務上他人の物を預かる者がこうした「横領」に及べば、前記②の業務上横領罪としてより重く処罰される余地が出てきます。
上記事例のAさんは、正しくそうした立場にあると言えます。
【業務上横領罪の発覚】
会社などの団体において起こる横領事件は、横領の事実を知る関係者からの告発によって明らかとなることが多くあります。
第一に、会社の上層部が事件を把握し、会社内において問題化することが考えられます。
会社によってはきちんと弁償すれば刑事事件にはしないこともあり、この段階では弁償をすることで問題の表面化を阻止できる場合もありえます。
次に、会社が刑事事件化する意思を見せ、捜査機関に横領事件として届け出ることが考えられます。
こうなると、捜査機関は横領事件として捜査を開始することが見込まれ、本格的に刑事事件化するおそれが生じます。
そして、事件の悪質性(主に金額面)次第では、逮捕により身柄が拘束されることもありえます。
横領事件の依頼を受けた弁護士は、事件が以上のいずれの段階にあるかを把握し、依頼者の意向を聞きながら最善と思われる選択肢を取ることになります。
きちんと被害弁償を行って刑事事件化を阻止することもあれば、裁判を見据えて執行猶予の獲得に向けた弁護活動をすることもあるでしょう。
いずれにせよ、弁護士への相談が早いに越したことありません。
横領事件を起こして不安を感じたら、一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に詳しい弁護士が、横領事件を起こした方のご相談も真摯にお聞きします。
ご家族などが横領事件で逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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