恐喝罪と示談について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
千葉県銚子市に住むAさんは,平成30年某日,知人であるVさんに頼まれて300万円を貸しました。
このお金は半年後に返すという話になっていましたが,Vさんは期限を過ぎても一向に返す気配がありませんでした。
そこで,Aさんが友人2人に相談したところ,「俺らがびびらせてやるから。お前は立ってるだけでいい」と言われ,一緒にVさん宅へ催促に行くことになりました。
そして,Aさんの友人らがVさんに対して「お前いい加減にしろよ。痛い目見たいのか」などと脅し,ひとまず30万円の支払いを受けました。
後日,Aさん宅を銚子警察署の警察官が訪ね,Aさんを恐喝罪の疑いで逮捕しました。
Aさんから依頼を受けた弁護士は,すぐに被害者との示談交渉に取り掛かりました。
(フィクションです。)
【Aさんらの行為は恐喝罪に当たるか】
刑法(一部抜粋)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
恐喝罪は,暴行や脅迫を用いて他人を脅し,その他人から財産の交付を受けた場合に成立する可能性のある罪です。
恐喝罪に似た罪として,強盗罪が挙げられます。
恐喝罪と強盗罪は,いずれも暴行・脅迫を手段として他人から財産を得る点では共通しています。
これらの区別は暴行・脅迫の程度に左右され,簡単に言うと強ければ強盗罪,弱ければ恐喝罪というかたちで分けられます。
理論的には,暴行・脅迫が「相手方の反抗を抑圧するに足りる程度だったかどうか」などの表現がされ,たとえば凶器が用いられればその程度に足りるという認定がされやすいと言えます。
上記事例では,Aさんら3人が,Vさんに対して身体を加害するような内容の脅迫を行っています。
多人数という事情はありますが,脅迫の内容からすれば,Vさんの反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫があったとは言い難いでしょう。
そうであれば,こうした行為によりVさんから30万円の交付を受けている以上,Aさんらには恐喝罪が成立すると考えられます。
なお,AさんはVさんにお金を貸していたことから,Aさんらの行為は取り立てにほかならず,恐喝罪は成立しないのではないかと思われるかもしれません。
ですが,裁判においては,行為が世間一般の常識に照らして相当なものかという点が厳しく見られる傾向にあります。
今回のように身体の加害を示唆したのであれば,いくら借金の取り立てとはいえ,正当であるとの主張は難しくなるでしょう。
【Aさんも恐喝罪の責任を負うのか】
今回のケースにおいて,Aさん自身はVさんを脅迫するような言動をしたわけではありません。
ですが,そのことから直ちに恐喝罪の責任を免れるというわけではない点に注意が必要です。
刑事事件においては,複数の者が共謀したうえで一個の犯罪が行われた場合に,原則として自ら犯罪に当たる行為をしたかどうかを問わず犯罪の責任を負うものとされています。
Aさんについて見てみると,たしかに脅迫自体は行っていませんが,借金の返済を受けるべく友人の提案を受け入れており,事件現場においても友人らの犯行を止めたりしていません。
そうすると,やはりAさんも恐喝罪の責任を負うことになるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,恐喝罪について的確なアドバイスを致します。
ご家族などが恐喝罪の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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