柏市の刑事事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
◇事件◇
会社員のAさんは、先週末に、千葉県柏市に出張に行き、夜は柏市内の繁華街で飲み歩きました。
そこで泥酔してしまったAさんは、スナックのトイレの扉を蹴破って壊してしまいました。
同僚がお店に謝罪して、弁償を約束したので、警察沙汰にならずに済みましたが、後日、お店から100万円以上の修理代と損害賠償を請求されてしまったのです。
正直Aさんは、泥酔していたので全く記憶がなく、請求された金額を払うことにも納得ができません。
しかしお店側は、「支払われなかったら、刑事告訴する。」と言っており、Aさんは今後の対処に悩んでいます。
(フィクションです。)
◇刑事告訴されると◇
Aさんの行為は、建造物損壊罪か器物損壊罪に抵触するでしょう。
建造物損壊罪とは、刑法第260条に規定されている犯罪行為で、その内容は「他人の建造物を損壊する」ことです。
「人の物を壊す」という点では、刑法第261条に規定されている「器物損壊罪」と同じですが、建造物損壊罪は、壊す物が建造物に限定されています。
~「建造物」とは?~
建造物損壊罪の「建造物」とは、家屋その他これに類似する工作物をいい、壁、屋根、囲い、柱により支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることのできる物をいいます。
戸や障子のように取り外しが可能な建具類については、建造物の一部ではないと解されますが、取り外すことのできない物については、建造物の一部とみなされることもあります。
~トイレの扉の場合は?~
上記したように、一般的な扉は取り外すことができるので、建造物損壊罪の客体となる可能性は低いと解せますが、これまで扉であっても、専門職の技術がなければ取り外すことのできない扉や、2個のちょうつがい取り付けられて、その取り外しが自在でない扉を壊した場合に、建造物損壊罪が適用された例があります。
~Aさんの事件を検討~
Aさんが損壊したトイレの扉がどのような形状で、どのように建物に取り付けられているかによって、適用される罪名が異なります。
~刑事罰~
建造物損壊罪の法定刑は「5年以下の懲役」ですが、器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。
懲役刑についても異なりますが、一番の違いは、罰金刑が規定されているかどうかです。
仮に、刑事事件化されて何らかの刑事罰が科せられる場合に、罰金刑の規定がある「器物損壊罪」ですと、略式起訴による罰金刑になれば、刑事裁判を免れることができますが、罰金刑の規定がない「建造物損壊罪」ですと、起訴によって刑事裁判を受けなければなりません。
◇刑事告訴を回避するには◇
Aさんのような状態に陥った場合、刑事告訴を回避するには、お店側と示談するしかないでしょう。
示談できるかどうかは被害者の感情によりますが、Aさんのように、示談金や弁償の金額に納得ができない場合は、一度、刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
刑事事件の示談金(弁償等)については、その金額に法律的な根拠があるわけではありませんが、やはり事件の内容によって妥当(相当)な金額は存在します。
また、後々トラブルとならないようにお互いが納得できるかたちで示談をしなければ、相手が望む金額を支払ったのに、刑事事件化されてしまったといったケースもあります。
そのような状況に陥らないためにも、刑事事件の被害者と示談する際は、一度弁護士に相談することを強くお勧めします。