今回は、居酒屋の個室で女性に対しキスなどのわいせつな行為をしたとして男性が逮捕された強制わいせつ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
<事案概要>
香取署は15日、強制わいせつの疑いで千葉県成田市在住の男性A(49)を逮捕しました。
逮捕容疑は昨年9月23日、香取市の居酒屋の個室内で、20代の女性Vにキスをするなどわいせつな行為をした疑いです。
同署によるとAは容疑を否認しているとのことです。
2人は面識があり、同10月6日にVが来署して相談し発覚しました。
(※11/16に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「20代女性にキス 強制わいせつ容疑で会社役員の49歳男を逮捕 千葉・香取署」の記事を一部変更して引用しています。)
<不同意わいせつ罪ではなく強制わいせつ罪?>
今回、Aは強制わいせつ罪の疑いで逮捕されています。
強制わいせつ罪は、令和5年7月に施行された改正刑法で名称が「不同意わいせつ罪」に変わりました。
名称だけでなく、適用される範囲や処罰内容についても大きく変更されています。
現在施行されている不同意わいせつ罪については、刑法第176条で以下のように規定されています。
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
Aは改正刑法後に逮捕されているのに、なぜ不同意わいせつ罪ではなく改正前の強制わいせつ罪で逮捕されているのか疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
確かに、逮捕されたのは改正刑法が施行された後ですが、AがVに対してわいせつな行為を行ったのは改正刑法の施行前です。
刑法には「遡及処罰の禁止」という原則があり、新しい刑法が施行された際に、過去に遡って新しい刑法を適用して処罰することはできません。
つまり、AのVに対する行為が不同意わいせつ罪に該当する場合であっても、行った当時に施行されていなければ適用して処罰することができないということです。
ただ、Aの犯行当時は強制わいせつ罪が適用されたため、Aには不同意わいせつ罪ではなく強制わいせつ罪が適用されたということです。
<強制わいせつ罪で逮捕されてしまったら>
改正刑法が施行され、強制わいせつ罪がなくなった現在でも、改正前に犯行を行っていたことが発覚すれば、強制わいせつ罪が適用される可能性は十分にあります。
また、強制わいせつ罪は逮捕される可能性や逮捕後も引き続き身柄が拘束される勾留手続きがなされる可能性も高いです。
強制わいせつ罪の法定刑には罰金刑がなく、6月以上10年以下の懲役と規定されています。
罰金刑がないため、起訴されると裁判が開かれることになり、上記の範囲で処罰を下される可能性が高いです。
勾留となれば最大20日間身柄が拘束されることになり、起訴となれば懲役刑が言い渡される可能性があることはもちろん、前科がつくことになります。
強制わいせつ事件において不起訴処分を獲得する可能性を上げるためには、被害者と示談を締結することが重要になります。
ただ、強制わいせつ罪のような性犯罪事件の被害者は精神的に大きなダメージを負うことも多く、加害者への処罰感情や恐怖心が強いことから、示談を締結することは難しいです。
なので、弁護士に刑事弁護活動を依頼して、代理人として被害者と示談交渉を進めてもらうようにすることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強制わいせつ事件はもちろん、様々な性犯罪事件の刑事弁護を担当して被害者との示談を締結した実績を多く持つ、刑事事件・少年事件に特化した専門の法律事務所です。
ご相談については、弊所フリーダイヤル(0120−631−881)で24時間365日受付中なので、千葉県内で性犯罪事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部までご相談ください。