荷物受け取りアルバイトが詐欺の共犯に

詐欺罪における未必の故意について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説致します。

【大学生による詐欺事件】

大学生Aさん(20代・男性)は、大学の先輩から誘われ、荷物の受け取りアルバイトを始めました。
そのアルバイトの内容は、あるアパートの空室で、その空き室の住人を装い、配達された荷物を名宛人を装って受け取り、その荷物を、回収に来た別の者に渡すというものでした。
Aさんは、荷物の内容については説明を受けていませんでした。
ちなみに、実際の荷物の中身は、詐欺の被害者が詐欺グループへ送付した現金でした。
Aさんは同じような荷物の受け取りバイトを、異なる場所で繰り返し、1回につき3000円の報酬を得ていました。
Aさんは、自分のやっていることは何らかの犯罪行為に関係するだろうとは思っていました
しかし、荷物の中身は、薬物か何かだと考えており、詐欺集団に騙された被害者から送られて来た現金を入れた物だとは思っていませんでした。
その後、Aさんの自宅に千葉県警察本部が来て、Aさんは詐欺罪の共犯として逮捕され、起訴されました。
(フィクションです)

【犯罪の認識】

犯罪行為それ自体を行ってはいない者でも、犯罪の共謀共同正犯として処罰されることがあります。
共謀共同正犯は、実行犯の背後にいる首謀者や、黒幕のような者だけが処罰されるわけではありません。
共謀共同正犯の成立要件は、

  1. 特定の犯罪を行うことについての意思の連絡があり
  2. その犯罪を自己の意思として行った

という立場にあれば処罰用件を満たすとされています。
もっとも、何か漠然とした意思の連絡では、特定の犯罪を行うことについての意思の連絡があったとは言えません。
その行為が犯罪として処罰されるためには、自分のしていることが犯罪行為に当たることが認識されていなければなりません。


刑法第38条 第1項
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。 ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。


罪を犯す意思とは、自らの意思である行為を行っているという認識を言います。
本件で言えば、被害者から送られて来た現金を受け取り、回収役に渡すことは、詐欺行為の重要な一部に当たると言えます。
しかし、自分が受け取った荷物が、現金ではないと思っていたのであれば、Aには、詐欺行為に関与しているという認識が無いので、詐欺の罪を犯す意思がないことになってしまいます。
これでは、詐欺罪に関与しているのにも関わらず、詐欺罪に問われない人が増えていってしまいます。
そこで、未必の故意があるかどうかにより、犯罪をしているという認識があったかどうかを判断することがあります。

【未必の故意】

未必の故意をかみ砕いて説明するならば「確実に犯罪が発生するとは思っていないが、被害が発生しても構わないと考えている」という認識です。
上記した事件例のAさんは、詐欺罪の認識があったと認められ、起訴されてしまいました。
Aさんのような、他人になりすまし財物を受け取る行為は、多くの詐欺事件で行われているため、詐欺罪の可能性は十分に想起できたはずです。

また、Aさんは、荷物の中身が薬物であると確認したわけではありませんでした。
これらの点から見れば、詐欺の可能性を排除できる事情があるとは認められないでしょう。

すなわち、Aさんは、「詐欺に当たるかも知れない」と認識しながら、荷物を受領し、「詐欺であっても構わない」と思い、荷物の受け渡しをしたため、詐欺の故意があると認定される可能性が高いです。
「詐欺とは思わなかった」
「お金だとは思わなかった」
という理由が認められることは、非常に難しいというのが現実です。

【弁護活動】

組織的な詐欺事件の末端の役割を担わされる者は、犯罪全体の全容を知らされていないことが多いです。
実際に詐欺事件に関与していても、そもそも自分の役割が犯罪のどの部分に位置付けられるのかすら知らないという人も多いです。

しかし、警察や捜査機関は、「知らなかったと言ってるから」「末端の者だから」という理由で、容疑者から外すようなことはしません。
携帯電話が押収され、通信履歴が解析されたり、駅の防犯カメラ映像などから、容疑者を割り出し、詐欺罪の共犯として検挙します。

詐欺罪の共犯として、ご家族が逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談下さい。
弊所では、弁護士が逮捕・勾留されたご本人様のもとに向かう初回接見サービスを行っております。
弊所の弁護士が接見にうかがい、事件の概要についてお話を聞かせていただき、ご家族様へ事件の見通しなどをご報告をさせていただきます。

もし、正式に弁護人としてのご依頼をいただいた場合は、被害者様への示談交渉を行うなど、少しでも科される刑罰が軽くなるための弁護活動を致します。

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