暴行罪で前科回避
Aさん(20歳)は、友人と居酒屋で酒を飲んだ後、自宅へ帰ろうと電車に乗りました。
車内は非常に混雑しており、Aさんは後から無理やり乗ってきたVさんに足を踏まれました。
これが原因でAさんとVさんは口論になり、結局千葉県南房総市内の駅で降りることになりました。
二人はしばらく言い争いを続けていましたが、ヒートアップしたAさんがVさんの胸倉を掴み、柱に頭を打ち付けました。
その様子を駅員が目撃し、Aさんは暴行罪の疑いで館山警察署にて捜査を受けることになりました。
Aさんは看護師を目指していたため、前科がついたらまずいのではないかと思い、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
【暴行罪について】
暴行罪は、他人の身体に「暴行」を加えたものの、傷害には至らなかった場合に成立する可能性のある罪です。
一般的に「暴行」は殴る蹴るといった行為を意味するものとして用いられますが、暴行罪が成立するのはそうした場合に限りません。
ここでいう「暴行」とは、不法な有形力・物理力を行使する一切の行為とされており、一般的な暴行よりも広い概念だからです。
上記事例では、AさんがVさんの胸倉を掴んだうえ、Vさんの頭を柱に打ち付けています。
柱に頭を打ち付ける行為が「暴行」に当たると考える方は多いかと思いますが、それだけでなく胸倉を掴む行為も「暴行」に当たるのです。
暴行罪の法定刑は、①2年以下の懲役、②30万円以下の罰金、③拘留(1日以上30日未満の拘置)、④科料(1000円以上1万円以下の金銭の納付)のいずれかです。
この罰則自体は比較的軽い方ですが、傷害罪や殺人罪といった他の罪が成立するとなると話は違ってきます。
刑事事件においては、逮捕のときに言われた罪名のまま捜査が進むとは限りません。
たとえば、事件後に受けた病院での診察で異常が見つかった場合、罪名が変わる可能性は十分ありえます。
そうした可能性が否定できない点で、暴行罪とはいえ軽視すべきではないでしょう。
【前科回避のメリット】
罪を犯して罰せられた経歴のことを前科と呼ぶことがあるかと思います。
この前科という言葉は法律上の用語ではなく、明確な定義があるわけではありません。
ここでは、前科を「過去に何らかの刑罰を受けた経歴」と定義して話を進めます。
前科というものは、時に「汚点」として扱われるように、特定の場面において不利益を及ぼすことがあります。
まず、前科を持つ者が再び何らかの罪を犯した場合、規範意識が低下しているとして重い刑を下されることがあります。
何十年も前であればさほど重要視されませんが、時間的に近接していればいるほどその影響力は大きくなることが予想されます。
ただ、上記不利益に限っては、当然ながらその後罪を犯さなければ問題はありません。
それよりも問題となりやすいのは、国家資格などの取得制限です。
たとえば、医師や看護師などの医療系の資格は、罰金以上の刑を科された者に対し「免許を与えないことがある」とされています。
また、地方公務員であれば、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者」が職員になったり選考を受けたりできないとされています。
このほかにも選挙で投票できなくなったり海外旅行が制限されたりするなど、前科による不利益は種々のものがありえます。
前科により自身がどういった不利益を被るのか、そもそも前科を回避できないのかといった点は、ぜひ法律の専門家である弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、数々の刑事事件と向き合ってきた弁護士が、前科に関するご相談にも真摯にお答えします。
暴行罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。