恐喝罪と示談について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。
【ケース】
千葉県銚子市に住むAさんは,平成30年某日,知人であるVさんに頼まれて300万円を貸しました。
このお金は半年後に返すという話になっていましたが,Vさんは期限を過ぎても一向に返す気配がありませんでした。
そこで,Aさんが友人2人に相談したところ,「俺らがびびらせてやるから。お前は立ってるだけでいい」と言われ,一緒にVさん宅へ催促に行くことになりました。
そして,Aさんの友人らがVさんに対して「お前いい加減にしろよ。痛い目見たいのか」などと脅し,ひとまず30万円の支払いを受けました。
後日,Aさん宅を銚子警察署の警察官が訪ね,Aさんを恐喝罪の疑いで逮捕しました。
Aさんから依頼を受けた弁護士は,すぐに被害者との示談交渉に取り掛かりました。
(フィクションです。)
【刑事事件における示談の意味】
示談とは,事件の当事者間において,謝罪や被害弁償などによりその事件が解決されたことを確認する合意のことです。
刑事事件において,示談が持つ意味は一般的に大きいと言えます。
以下では,刑事事件において示談がもたらす効果を中心に解説していきます。
そもそも,ある行為が犯罪として法令に規定されているのは,本来保護されるべき権利や利益がその行為により害されるからです。
こうした保護されるべき権利や利益のことを,専門的には保護法益と呼びます。
たとえば,暴行罪であれば人の身体が,恐喝罪であれば人の財産が保護法益だと考えられます。
こうした保護法益には様々なものがあり,身体や財産などの個人的な利益もあれば,社会秩序や風俗などの公的な利益もあります。
ある者が有罪か無罪かの判断と,有罪である場合の処罰の内容は,全て裁判所という国家の機関が裁判により決める事柄です。
そして,裁判の準備活動として行われる捜査(被疑者の取調べや証拠の収集など)も,主として捜査機関という国家の機関によって行われます。
これらのことから,刑事事件に関しては,刑罰権を持つ国家と刑罰を向けられる私人という構造になっていると言えます。
一方,先述のように示談は事件の当事者が結ぶ合意であり,その性質は公的機関が関与しない私的な約束(契約)です。
このように,刑事事件と示談は公的な関係と私的な関係という違いが見られ,本来であれば性質が全く異なるものです。
そのため,ある事件について示談が成立したからといって,そこから直ちに刑事事件が終了するわけではありません。
それにもかかわらず,刑事事件において,示談の成否は処分に大きな影響を及ぼすことがあります。
その理由は,示談を通して被害填補の事実や被害者の意思が明らかとなり,それが処罰の必要性に関わるからです。
たとえば,恐喝罪は個人の財産を害する罪であり,国家としては個人の財産の侵害という行為をターゲットにして刑罰を科します。
ここで,もし被害者の金銭的損害が回復されていたり,被害者が処罰を望んでいなかったりする場合にまで厳しい刑罰を科すとすると,何のための刑罰なのか疑問が生じます。
こうした事情から,被害を受けた被害者側の事情を配慮のうえ刑事処分を決めるということで,示談が考慮されるのです。
上記のような事情から,事件の内容いかんによっては,被害者との示談がそこまで大きな意味を持たないことがあります。
たとえば,公然わいせつ罪は性風俗という公の利益を乱す罪であるため,わいせつな行為の目撃者と示談したからと言って,その点が処分に大きく影響するとは限りません。
示談がどのような効果を持つかは事件により様々なので,示談をお考えならまず弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に強い弁護士が,示談をしたい,あるいはしてほしいというご相談に真摯に耳を傾けます。
ご家族などが恐喝罪の疑いで逮捕されたら,刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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