過失運転致傷罪で執行猶予
Aさんは、千葉県長生郡睦沢町にて自動車を運転していた際、Vさん(30歳)と接触する事故を起こしました。
事故の現場は交差点であり、Vさんが横断歩道を渡ろうとしていたのに気づかずAさんが右折したのが事故の原因でした。
これにより、Vさんは全治1か月の怪我を負い、茂原警察署は過失運転致傷罪の疑いで捜査を開始しました。
Aさんから相談を受けた弁護士は、仮に裁判になっても執行猶予となる可能性があると言いました。
(フィクションです。)
【過失運転致傷罪について】
刑法は、不注意による他人への傷害を過失傷害罪として罰することとしています。
本来なら刑罰を科すに値するのは故意犯であり、過失犯という類型を設けるのは例外的な場合にのみ許されると考えられています。
そのため、過失傷害罪の罰則は30万円以下の罰金または科料(1000円以上1万円未満の金銭の徴収)と軽くなっています。
ところが、自動車が普及するにつれてその危険性が認知されるようになったことで、自動車による過失傷害は重く罰すべきではないかと考えられるようになりました。
そこで、刑法改正により自動車運転過失致傷罪という特別な規定が置かれ、現在ではそれが「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に組み込まれるに至っています。
この法律では、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処すると定められています。
ただし、傷害の程度が軽ければ、情状により刑が免除される余地があります。
実際にどの程度の刑が科されるかは、怪我の程度、不注意の内容、被害弁償の有無などにより変わってきます。
不起訴になることもあれば裁判で懲役刑が科されることもあるため、結果については個々の事案により様々です。
ちなみに、特定の状態(たとえば飲酒運転や大幅なスピード違反など)で人身事故を起こした場合、危険運転致死傷罪というより重い罪となります。
その法定刑は1年以上の懲役であり、相当長期の懲役刑が言い渡される可能性も決して否定できません。
【執行猶予の概要】
過失傷害罪と比較すると、過失運転致傷罪の法定刑が重いことは否定できません。
ですが、そうはいっても過失運転致傷罪が故意犯でなく過失犯であることには変わりなく、執行猶予が付く余地は十分あると考えられます。
執行猶予とは、刑の重さが一定の範囲内である場合において、一定期間刑の全部または一部を執行しないでおく制度のことです。
一部執行猶予は再犯防止を図るべく主に薬物事件などで行われるため、以下では全部執行猶予について説明します。
刑の全部執行猶予は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金を言い渡す際、情状により付されるものです。
いったん刑の全部の執行を回避できるため、裁判が終わったあと直ちに刑務所に収容されるという事態を防ぐことができます。
それだけでなく、指定された期間執行猶予が取り消されなければ、刑の言い渡しは効力がなくなります。
つまり、猶予された刑を受ける必要がなくなるというわけです。
執行猶予が取り消されるのは、たとえば禁錮以上の実刑が科された場合などが挙げられます。
ご不安であれば、執行猶予となって後のことも含めて弁護士に相談しておくとよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、数々の刑事事件と接してきた弁護士が、執行猶予に関するご相談を真摯にお聞きします。
過失運転致傷罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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