保護責任者遺棄罪の取調べ対応
Aさんは、交際相手であるBさんと性行為に及んで妊娠しました。
しかし、Aさんの妊娠を知ったBさんは行方をくらましてしまい、一人で子どもを育てる金銭的余裕がなかったAさんは途方に暮れました。
結局Aさん出産しましたが、生んだ子Vさんを千葉県習志野市内の病院の入り口に置き去りにしました。
その数時間後、病院の職員がVさんを見つけて警察に通報したことで、習志野警察署が捜査を開始しました。
後日、Aさんは保護責任者遺棄罪の疑いで逮捕されたため、接見に来た弁護士が取調べ対応を伝えました。
(フィクションです。)
【保護責任者遺棄罪について】
他人の助けがなければ日常生活を営むのが困難な者(要扶助者)を「遺棄」したり、必要な世話を意図的に怠ったりした場合、遺棄罪が成立する可能性があります。
この遺棄罪には、あらゆる者が主体となる単純遺棄罪と、要扶助者を保護すべき義務を負う者のみが主体となる保護責任者遺棄罪があります。
ここで言う要扶助者の保護義務は、家族関係、契約、排他的支配(自身以外に保護を行う者がいない状況にあること)などの様々な要素を根拠とします。
そのため、実務上は、保護義務があったとして保護責任者遺棄罪の成立を認めるケースが多くあります。
保護責任者遺棄罪における「遺棄」とは、相手方を危険な場所に移転させる、または危険な場所にいる相手方を放置してその場を離れる行為を指します。
上記事例では、Aさんが生後間もない乳児のVさんを病院の入り口に置き去りにしています。
こうした行為は、必要な世話をせずにVさんを置き去りにするものと言うことができます。
そして、AさんはVさんの親であることから、Vさんを保護すべき義務を負っていたと言って差し支えありません。
そうすると、Aさんには保護責任者遺棄罪が成立すると考えられます。
保護責任者遺棄罪の法定刑は、3か月以上5年以下の懲役です。
もし遺棄によって要扶助者が死亡した場合、より重い保護責任者遺棄致死罪になる余地が出てきます。
また、殺意を持って遺棄をすれば殺人未遂罪に、その結果死亡させれば殺人罪になることもありえます。
こうしたより重い罪が成立する可能性もあるため、後述のとおり取調べ対応が重要になるでしょう。
【保護責任者遺棄事件の取調べ対応】
保護責任者遺棄罪を犯すと、先ほど説明したようなより重大な罪の疑いで捜査が進む可能性が十分ありえます。
この場合、特に重要なのは殺意の有無に関する取調べ対応です。
死亡の事実とは異なり、殺意というのは本来的には行為者の内心に大きく関わるものです。
そのため、取調べにおける供述が重要な証拠の一つとなることも多く、捜査機関としても取調べで厳しく追及するのが通常です。
ですので、取調べ対応をきちんと身につけないと、殺意が認定されて殺人未遂罪や殺人罪の責任を負うことになりかねません。
殺意に関する取調べにおいて、特に注意すべきことが1つあります。
それは、世間一般に言う殺意よりも刑事事件における殺意の方が広い点です。
たとえば、積極的に人を殺害しようとした場合、世間一般にも殺意があったことに争いはないかと思います。
刑事事件では、これに加えて「死ぬかもしれないがそれでも構わない」という場合も殺意があったとみなされます。
保護責任者遺棄事件の場合、殺害を意欲することはなくとも認容することはありえる話です。
捜査機関もその点を突いてくることは考えられるので、自身のケースについて取り調べ対応を弁護士に確認しておくことが得策です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が、豊富な知識と経験に基づき最適な取調べ対応をお伝えします。
ご家族などが保護責任者遺棄罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
習志野警察署までの初回接見費用:36,700円