盗撮と示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
Aさんは東京都内の会社に勤める会社員です。自宅は千葉県内にあり、電車で通って出勤しています。Aさんは、ある日、千葉県内の駅の階段を上っている途中、スマートフォンのカメラ機能を用い、目の前の女性のスカートの中を盗撮してしまいました。ところが、Aさんは付近を警戒していた鉄道警察隊の警察官に盗撮行為を現認されてしまい、Aさんは千葉県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。AさんはVさんとの示談を望んでいます。
(フィクションです)
~千葉県の迷惑行為防止条例~
Aさんは千葉県が制定する「千葉県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」違反の罪に問われています。
同種の条例は47都道府県全てにおいて制定されており、「迷惑行為防止条例」、「迷惑防止条例」などと呼ばれることもあります。
同条例第3条2項によれば、
①公共の場所又は公共の乗物において、
②女子を著しくしゅう恥させ、又は不安を覚えさせるような
③卑わいな言動
をすることが禁止されています。
男子に対する行為も同様となっています。
これに違反し、有罪が確定すると、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
駅は「公共の場所」に該当します。
それでは、スマートフォンのカメラ機能を用いて女性のスカート内を盗撮することが、「卑わいな言動」に該当するのでしょうか。
「卑わいな言動」とは、「社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」を意味します(最高裁平成20年11月10日決定)。
通常、女性のスカート内を無断で撮影する行為は「卑わいな言動」に該当すると判断されるでしょう。
なお、上記の最高裁平成20年11月10日決定は、スカート内ではなく、細身のズボンを着用した女性の臀部を撮影する行為が「卑わいな言動」に該当すると判示したことで有名な判例です。
駅において、女性のスカート内を無断で撮影したAさんの行為が、千葉県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反の罪を構成する可能性は極めて高いと思われます。
~盗撮の示談(交渉)に弁護士が入る意味~
AさんはVさんとの示談交渉を望んでいるようですが、示談交渉は以下の理由から弁護士に依頼する必要があります。
= 被害者の連絡先を入手でき、示談交渉が可能となる =
盗撮の場合、加害者自ら被害者と示談交渉しようとしても、被害者と面識がなく連絡先を知らないことが大多数だと思われます。
また、警察などに連絡をしても、被害者に対する罪証隠 滅行為を疑われ、被害者のプライバシーを保護する観点からも被害者の連絡先を教えてはくれません。
この点、弁護士であれば被害者の同意のもと連絡先を連絡先を入手することができ、示談交渉を始めることが可能です。
= 円滑な示談交渉が期待できる =
盗撮によって被害者は辱めや、不安を受けています。
そこに、加害者自ら示談交渉を進めようとしても被害者の感情を逆なでするだけになってしまうことも考えられます。
この点、弁護士であれば、そのような感情を抜きに示談交渉を進めることができます。
弁護士であれば、当事者の間に立って、被害者の要望と加害者の要望とを上手く調整しながら示談交渉を進めることができます。
= トラブルを避ける =
示談に関するトラブルを避けるには、適切な内容・形式で示談書を作成しなければなりません。
一部の条項が欠けていたり、文言が不適切だった場合はのちのちのトラブルに発展しかねません。
この点、弁護士は示談書作成の専門家です。
安心して示談書作成を任せることができます。
= 不起訴を獲得できる =
盗撮では、示談締結が不起訴獲得のための必要条件といっても過言ではありません。
もちろん前科や犯行態様などにもよりますが、刑事処分前に示談を成立させることができれば、不起訴獲得の可能性は飛躍的に上がります。
作成した示談書の写しは検察官に提出しますが、弁護士が間に入って作成した示談書であれば信用性が増し、不起訴処分に繋がりやすくなります。