詐欺事件で保釈請求②

詐欺事件で保釈請求を行うケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
このテーマは前編・中編・後編と分かれており,前編と中編(今回)で詐欺事件を,後編で保釈請求を取り扱います。

【ケース】

Aさんは,知人であるBさんからの誘いを受け,あるバイトをすることになりました。
そのバイトの内容は,「民事訴訟最終通達書」と題する文書を葉書に印刷し,その葉書を投函するというものでした。
葉書に印刷された文書は「訴訟告知センター」という架空の団体名義(押印つき)であり,民事訴訟が提起されていること,記載してある連絡先に連絡しなければ強制執行が行われることなどが書かれていました。
そして,実際にこの葉書を見て連絡した人が,電話の相手に言われるがまま口座に金銭を振り込むという詐欺事件も起きていました。
Aさんは,バイトが詐欺に関するものだとうっすら気づいていましたが,時給が良いという理由で続けていました。
そうしたところ,Aさんは有印私文書偽造罪の疑いで我孫子警察署に逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は,今回の件で詐欺罪に問われる可能性を伝えたうえで,身柄解放の手段として保釈について説明しました。
(フィクションです。)

【今回のケースにおいて問題となる行為】

今回のケースで問題となりうるのは,①葉書の作成および投函,②葉書を受け取った者による金銭の振込,の2点です。
今回の記事では,このうち②について取り扱います。

【②について~詐欺罪成立の可能性~】

まず,今回のケースで問題となっている葉書は,民事訴訟が提起されていること,記載してある連絡先に連絡しなければ強制執行が行われることなどが書かれているものです。
そして,この葉書を見て連絡した人に対し,電話担当が金銭の振込を促し,これにより葉書を見た人が金銭を振り込んでいると考えられます。
このような行為について,詐欺罪が成立する可能性があります。

詐欺罪は,他人を欺いて財産を受け取った場合に成立する可能性のある罪です。
具体的に言うと,①他人を欺く行為(「欺罔行為」と呼ばれます)により,②その他人が錯誤に陥り,③錯誤に陥った状態で財産を交付することが詐欺罪の要件です。

今回のケースにおける葉書の郵送と電話での案内は,民事訴訟が提起されており,指定された口座に金銭を振り込まなければ強制執行などの不利益を被ると他人に誤信させる内容のものと考えられます。
そうすると,金銭を支払う必要があるように装う点で,①の他人を欺く行為に当たると言えます。
更に,振込を行った人は,葉書と電話を受けてそのように誤信したと考えられるため,②の錯誤も認められるでしょう。
そして,これにより振込を行った以上,③の財産の交付はあったと評価できます(厳密に言うとこの点はもう少し検討が必要ですが,難解であるため割愛します)。
よって,やはり詐欺罪が成立する可能性があります。

それでは,Aさんも詐欺罪の責任を負うことになるのでしょうか。
Aさんは葉書を作成して投函しただけで,金銭を振り込ませるような行為は行っていないことから,せいぜい詐欺未遂罪の責任を負うに過ぎないようにも思えます。
ですが,結論としては,Aさんに詐欺罪が成立する可能性があります。
今回のように複数人が互いに通じ合って犯行に及び,なおかつそれぞれが重要な役割を果たしている場合,犯罪に関与した者は「共同正犯」(刑法60条)という関係に当たる余地が出てきます。
仮に共同正犯の関係に立つとすると,たとえ一部の行為しかしていなくても,全部の行為をおこなったものとして責任を負うことになるのです。
したがって,Aさんは他の者が行った行為についても責任を負うおそれがあるということになります。

前回の記事で確認したように,今回のケースではAさんに有印私文書偽造罪と偽造有印私文書行使罪も成立する可能性があります。
これに詐欺罪が加わるので,事件としては重い部類に属すると評価できます。
ちなみに,文書偽造罪,偽造文書行使罪,詐欺罪はそれぞれ牽連犯(前回の記事参照)の関係に立つとされています。
そのため,1個の罪とみなされて1個の刑が科されることが予想されるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件のプロである弁護士が、比較的なじみのある犯罪である詐欺罪についても詳しく説明いたします。
ご家族などが詐欺事件で逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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