判員裁判と取調べの録音・録画~千葉県内の強盗致傷事件を基に解説【後編】~

今回は、前回に引き続き、裁判員裁判と、刑事事件の取調べの際に行われる「取調べの録音・録画」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説いたします。

~事例~

 千葉県内のリサイクルショップに昨年12月、男らが押し入り店主に暴行を加え売上金120万円と商品の高級腕時計などを奪い逃走した事件で、県警捜査1課は、強盗致傷と建造物侵入容疑で千葉県館山市居住のA男(20代、自称派遣社員)を逮捕した。
 県警は、捜査に支障があるとして認否は明らかにしていない。

 逮捕容疑は令和4年12月9日午後7時半ごろ、共犯者の男らと千葉県内のリサイクルショップに侵入。男性店主の顔面をバールで殴ってけがをさせ、「金庫はどこだ」などと脅迫して金品を奪おうとした疑い。
 この事件を巡っては、実行役とされるB男(20代、無職)、C男(30代、会社員)の2名も逮捕されている。
 男らに面識はなく、SNS上の高収入バイトに申し込み、指示役とみられる者から本件犯行の指示を受けた、所謂「闇バイト」であるとみて、背後関係を含め慎重に捜査を進めている。

 なお、男性店主は意識不明の重体とのことです。

本件事例はフィクションです。 

~刑事事件の取調べ~

 本件事例は裁判員裁判の対象事件であることは、前編でご説明した通りです。
 裁判員裁判の対象事件となると、警察の捜査手続きにおいても、いくつかの違いが出てくることがあります。
 その一つが、今回ご紹介する取調べの録音・録画です。
 まず、取調べとはどういうものかを簡単にご説明します。

 刑事事件の取調べは、警察署や検察庁などの取調室において行われます
 取調べによって、捜査機関は事件の真相を解明すべく、被疑者から犯行の動機や、犯人しか知り得ない秘密の暴露など、被疑者が罪を犯したと認めることができる話を聴き取り、その内容は供述調書としてまとめられることが一般的です。

 取調べは取調室という机と椅子以外はなにもなく、広さも数メートル四方程度しかない小さく、殺伐とした雰囲気の部屋の中で、被疑者と取調官、取調べ補助者など、限られた人数で行われます。
 また、警察署での取調べにおいては、プライバシー保護の観点からも、多くの警察署は刑事課や生活安全課、交通課などの事件や事故の捜査を担当する部署の執務室の奥にあり、人目のつかない場所に設けられている場合がほとんどです。

 そのため、以前までは、取調官が被疑者を大声で怒鳴りつける、机を叩く、椅子を蹴る、煙草を吸わせる代わりに自白を強要する、長時間にわたり取調べ室内に拘束し、自白するまで取調室から外に出さないなど、刑事ドラマなどで目にするような取調べが実際に行われていました。

 そうした取調べは、被疑者に対する精神的な負担は大きく、結果として、犯してもいない罪まで認めてしまうケースや、被疑者の供述の信ぴょう性が疑問視されることとなり、取調べの方法が見直されるとともに、取調べの可視化に向けた改革が行われることになりました。

 そうした動きを受け、対象となる身柄事件(≒逮捕・勾留されている事件)の取調べの様子の全てを録音・録画を義務付ける改正刑事訴訟法が令和元年6月1日から正式に施行されたのです。

 現在は、先挙げた、被疑者を大声で怒鳴りつける、机を叩く、椅子を蹴る、自白を強要する、長時間にわたり取調室に拘束することなどは全て禁止されています。 

~取調べの録音・録画、裁判員裁判との関係とは~

 取調べの録音・録画の対象となる事件は次の通りです。

1.裁判員裁判対象事件(弁論の併合により裁判員裁判で審理される見込みのある裁判員裁判費対象事件を含む)

2.知的障害を有する被疑者で言語によるコミュニケーション能力に問題がある者、又は取調官に対する迎合や被誘導性が高いと認められる者に係る事件

3.精神の障害等により責任能力の減退・喪失が疑われる事件

4.独自捜査事件(検察官が直接告訴・告発等を受け又は自ら認知して捜査を行う事件(国税局、証券取引等監視委員会、公正取引委員会等による告発に基づいて捜査を行う事件を含む。))であって当該事件について検察官が被疑者を逮捕した事件

 また、取調べの録音・録画が義務付けられているのは、これらに該当する事件のうち、身柄拘束(≒逮捕・勾留)されている事件に限られます

 取調べの録音・録画は、不当な取調べから被疑者らを守るため、適正な捜査を推進するために行われますが、その一方で、供述する内容がすべて録音・録画されているため、なにを話すのか、どのような態様で話をするのかによって、被疑者側の不利益となる場合もある。取調べの対応が非常に重要になる、ということは覚えておいた方が良いかもしれません。また、事前に話す内容などを整理しておくことがより大切です。
 

~取調べを自分で録音・録画できるか~

 身柄が拘束されていない(≒在宅捜査)被疑者の方で、警察官の話を録音・録画したい、と思う方もいるかと思います。
 しかし、警察官ら捜査機関側には拒否されることがほとんどです。
 理由は様々ですが、取調べでは、被疑者の生い立ちや生活状況、事件の内容や犯行動機、関係者がいればその方との関係など、個人情報を含め様々なことを聞かれます。また、場合によっては捜査機関の捜査情報などを踏まえて会話が行われることもあります。

 そのため、守秘義務の面からも、こうした内容が漏洩することを防ぐ意味でも、録音・録画機器の持ち込みについては禁止される場合がほとんどです。

 しかし、身柄拘束がされていない(≒在宅捜査)の取調べは任意捜査ですので、必要に応じて取調べを中断してもらい、取調室の外で弁護士に電話で相談すること等はできます

 取調べが不安な方やサポートをご希望の方は、是非一度、弁護士に相談することをオススメします。

~ご家族が逮捕されてしまったら~

 強盗致傷の疑いで逮捕されてしまった場合には、すぐに弁護士の接見を受け、裁判員催裁判を見据えたアドバイスやサポートを受けることをおすすめします。
 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、平素より刑事事件・少年事件を数多く受任してきた実績を持つ法律事務所です。
 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は千葉支部のみならず、札幌、仙台、東京(新宿)、八王子、横浜、名古屋(本部)、大阪、京都、神戸、福岡全国各地に事務所があり、初回無料の法律相談も行っております。
 ご家族が逮捕されてしまい、お困りの方は、是非一度、0120-631-881(24時間電話受付中)までお気軽にお電話ください。

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