~事案~
Aさんは,日雇いの仕事をしながら,全国を転々と回っていました。
その日は千葉県柏市内での仕事を終え,柏駅の近くで飲酒したあと,近くの交差点でタバコを吸っていたところ,警察官から呼び止められ,職務質問を受けることになりました。
警察官から,路上でタバコを吸っていたことを注意されたAさんは,ついカッとなり,警察官と口論になったのです。
段々と,興奮してきたAさんを警察官がなだめようとしましたが,Aさんの怒りは収まらず,ついには,警察官の顔面に唾を吐きかけてしまいました。
そして,ついに,Aさんは公務執行妨害罪として,現行犯逮捕されることとなってしまったのです。
※守秘義務及び個人情報保護の観点から一部,事実と異なる記載をしています。
また,本件は新型コロナウイルス蔓延以前の事案になります。
~公務執行妨害罪とは~
公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
公務執行妨害罪は,広く「公務員」であれば適用されるものの,この法律が保護しているのは,国家や公共団体の機能としての公務を公正かつ円滑な遂行であり,公務員一個人の身体の安全や意思決定を保護するものではないとされています。
つまり,警察官等が正当な職務執行を行っている際,その職務を円滑に遂行することを妨害してはいけないとしたものである一方,その人いち個人の感情によるもので執行してはならないとされています。
~逮捕の要件とは~
なんらかの犯罪行為を行ってしまった際,直ぐに逮捕されてしまうのではないかと,不安な方も多くいらっしゃるかと思います。
捜査機関の捜査は原則,任意捜査(在宅捜査)で行わなければなりません。
任意捜査(在宅捜査)とは,身柄を拘束することなく,捜査を推進するです。任意捜査(在宅捜査)の被疑者として取調べを受けている間であって,学校に行ったり会社に行ったり,と,通常の社会生活を送ることができます。任意捜査は,在宅捜査,在宅送致などとも言われることがあります。
では,どのような場合に逮捕されてしまうのでしょうか。
それは,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」が認められた場合です。
まず,「逮捕の理由」とは,「ある者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」のことです。
たとえば,「盗んだ財布を持っていた」や,「被害者をバットで殴る様子が防犯カメラに写っていた」と言った時に,逮捕の理由が認められる場合があります。
「何か犯罪が起きた」ということと,「誰がその犯罪を起こしたのか(≒犯人が誰か目星がついている)」ということが分かった時に,「逮捕の理由がある」といえるでしょう。
次に「逮捕の必要性」とは,身柄を拘束しなければ,捜査を続けることが出来なくなってしまう場合等を指します。
具体的には,「犯人に逃走するおそれ」がある場合,「犯人が証拠を隠滅するおそれ」がある場合などがあたります。
また,逮捕し,強制捜査を開始するためには,一部例外を除いて,裁判所が発付した逮捕状を示さなければ身柄を拘束することは出来ないとされています。
ですが,今回のように現行犯逮捕となると,少しだけ毛色が異なります。
現行犯逮捕は捜査機関以外の一般人でも行うことが出来るのが一つの特徴です。
また,逮捕する要件が定められており,
1 犯罪と犯人の明白性
誰が,なんの罪を犯したのか,逮捕する側にとって明らかであること
2 犯罪の現行性,時間的接着性の明白性
犯人が罪を行い終わって,間がないことが明らかであること
の両方が揃っている場合に限り,犯人を現行犯逮捕することができるのです。
~当事務所の活動~
Aさんが逮捕されたことを知ったAさんのお母様から,当事務所に依頼を頂き,Aさんの下へ弊所の弁護士が向かいました。
既に逮捕されてから時間がたっており,Aさんには国選弁護士もいたようですが,国選弁護士からご家族への報告や連絡等もなく,また,Aさん自身も国選弁護士さんに対してはやや不信感を抱いているようでした。
Aさんは前科前歴もなく,初めて留置場にはいったことから酷く憔悴している様子でしたが,当所の弁護士が接見に行ったことで,安心した様子でした。
弁護士がさらに詳しく話を聞いてみたところ,Aさんは,警察官の職務質問を受けたこと,路上喫煙を注意されたことについては真摯に認め,自身の軽率な行いについて反省している様子でした。ただし,今回,警察官に対し唾を吐きかけたり,警察官の職務を妨害したりした,という点については,「自分はそんなことをしたつもりはない」とのことでした。
そこで,事実関係を明らかにすることはもちろん,先ずは,Aさんの心身の健康のために,身柄拘束を解くことを第一とし,活動を始めました。
裁判所に対して,今回の事件において証拠が隠滅されるおそれはなく,また,事件そのものの性質としても特別重い犯罪ではないことを根気よく説明し,交渉していきました。
当初は保釈申請を棄却されていましたが,そこで諦めることなく,当所弁護士が再度粘り強く説得を行い,ついに,逮捕時には住所不定の状態とみなされていたにも関わらず,Aさんは保釈されることとなったのです。
また,特に警察官に対する公務執行妨害罪は,捜査においてその他の犯罪と異なる点があります。一般の方よりも法律に精通している警察官が被害にあったその時から,事件の立件をするために初動捜査を尽くすことから,加害者に不利な証拠が早い段階から揃いやすい点です。被害に遭った警察官本人が,「どうやったら加害者(被疑者)に犯罪が成立しやすいか」を分かっているからこそ,より不利な証拠が見つけられやすいということです。
そして,証拠が早い段階から揃うということは,取調べを受ける時も加害者の供述の一つ一つが重要になってきます。どちらとも捉えることができる供述では,どんどんと追及を受けることにもなり,心理的な負担がかなり大きくなることが想定されます。
そのため,もし,逮捕されてしまった場合,いち早く当あいち刑事事件総合法律事務所へご相談いただくことをお勧めいたします。
当所では,刑事事件を数多く扱ってきた経験豊富な弁護士から,処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ,その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
また,取調べの対応方法や供述内容に対するアドバイスを受けることで,誤解を招くような供述を避けることが出来ます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は日頃より刑事事件を専門的に受任し,数多く扱ってきた実績がございますので,どのような事件でも安心してご相談頂けます。
また,千葉県内のみならず,北海道(札幌市),宮城県(仙台市),埼玉県(さいたま市),東京都(新宿区・八王子市),神奈川県(横浜市),愛知県(名古屋市),大阪府(大阪市),京都府(京都市),兵庫県(神戸市),福岡県(福岡市)と,全国各地に事務所がございます。
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