自動車の安全技術は時代とともに進化しています。
エアバッグやABS(アンチロックブレーキシステム)のように定着したものから,最近ではふらつきに対する警告や緊急自動ブレーキといった機能も生まれています。
しかし,一方で交通事故がなくならないのも事実です。
いかに安全技術が発達しても,最後はドライバーの注意力にかかってくるため,人身事故,死亡事故の悲劇は今この瞬間にも起きています。
これらの事故が被害者や遺族の人生を大きく狂わせてしまうことはもちろんですが,同時に加害者にも刑事手続が待っています。
ここでは,人身事故,死亡事故に対して法律がどのような規制を行っているかについて見ていきましょう。
人身事故,死亡事故を規制する法律
かつては業務上過失致死傷罪(刑法211条)が人身事故,死亡事故に適用されていました。
その後,甚大な被害をもたらした死亡事故への厳罰化要求が高まり,危険運転致死傷罪,自動車運転過失致死傷罪がそれぞれ刑法に新設されました。
現在では,刑法とは別の法律である,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が人身事故,死亡事故に対する刑罰を定めています。
一般的な交通事故について
一般的な交通事故については,過失運転致死傷罪として,「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。」と規定されています(同法5条)。
アルコールの摂取や大幅な速度超過,信号無視といったより危険性の高い行為が伴う場合は,人身事故で15年以下の懲役,死亡事故で1年以上20年以下の懲役と,より重い刑罰が科されます(同法2条)。
かつては危険運転致傷罪が認められるためのハードルが高かったのですが,現在はそこまでに至らないアルコール,薬物摂取でも危険運転として罪が重くなる範囲が広がっています(同法3条)。
他にも,無免許の場合に刑が重くなる(同法6条),アルコールや薬物の摂取が発覚しないように,事後的にアルコール等を摂取する,その場から逃走するといった行為自体も刑罰の対象になる(同法4条)といった規定も存在します。
過失運転致死傷罪の場合,起訴猶予などの理由で不起訴となっている事件も少なくありません。
仮に起訴された場合も,相対的にみれば多くの事件が罰金刑で終了します。
これに対して,危険運転致死傷罪の場合,不起訴になる確率は低くなります。
危険運転致死傷罪の場合,過失運転致死傷罪と異なって罰金刑がないため,有罪になった場合は懲役刑となります。
このように,過失運転致死傷と危険運転致死傷では刑事手続の進み方が大きく異なるため,罪名や個々の事件態様に応じた弁護活動が必要になります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では,刑事事件を扱う弁護士事務所として,事件の内容に即し,起訴猶予や執行猶予の獲得に向けて弁護活動を展開します。
人身事故,死亡事故の加害者になってしまった場合は,まずは一度ご相談ください。