性犯罪というと強制性交等罪(改正前刑法のもとでは強姦罪)や強制わいせつ罪をイメージされる方も多いかもしれませんが,盗撮,のぞきもれっきとした性犯罪です。
盗撮ものぞきも,基本的に被害者に気づかれないように行われるため,ばれなければいいと犯行を心理的に後押ししてしまう面もあります。
また,最近ではカメラの高性能化・小型化やスマートフォンが普及したことにより,誰もが盗撮・のぞきの加害者になる場合がありえます。
ここでは,盗撮・のぞきを規制する法律や,どのような場合に犯罪が成立するかを確認していきましょう。
盗撮・のぞきを規制する法律
盗撮・のぞきは犯罪ですが,刑法に違反するわけではありません。
盗撮・のぞきを規制するのは,各都道府県で制定されたいわゆる迷惑防止条例と軽犯罪法になります。
千葉県の場合,「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」で盗撮・のぞき行為が規制されます。
同条例3条の2は「何人も、みだりに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次の各号に掲げるものをしてはならない。」としています。
具体的には,
浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を身に着けない状態でいる場所及び住居
公共の場所や公共の乗物
学校
事務所
その他の不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りすることができる場所
タクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用することができる乗物
において,人の通常衣服で隠されている下着又は身体を,写真機その他の機器を用いて撮影したり撮影する目的で写真機等を差し向けたり設置したりすることを禁止し(盗撮),人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすることを禁止しています。
そして,撮影した場合は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。(同条例13条1項)
写真機等を差し向け、設置した場合や卑わいな言動をした場合は,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます(同条例13条の2第1項)。
各自治体が定める迷惑行為防止条例は,おおよそ同じような規律になっています。
しかし,自治体によっては、条文が若干異なります。
例えば東京都では「公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。」として盗撮という犯行態様を別個に規制しています。
のぞき行為は,「前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。」として規制されています。
迷惑行為防止条例違反は公共の場での盗撮・のぞき行為を規制しています。
それゆえ,風呂場をのぞいたりする行為は,迷惑防止条例では規制されません。
この場合は軽犯罪法で規制がされます。同法1条23号は「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を規制しているため,いわゆるのぞき行為は軽犯罪法違反になります。
なお,盗撮・のぞきに建物への立ち入りが伴う場合,迷惑行為防止条例違反や軽犯罪法違反とは別に,住居侵入罪・建造物等侵入罪(刑法130条)も成立するため注意が必要です。
このように,同じ盗撮・のぞき行為といっても,どこで行うかによって規制根拠が法律か条例かの違いが生じます。
冒頭でも述べましたが,現在は盗撮・のぞきに悪用できる機器の高度化,普及が進んでいるため,前科がなくても魔が差してこれらの犯罪を行ってしまうことはありえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では,刑事事件を扱う弁護士事務所として,被害者との示談を始めとして,迅速な対応に努めます。
盗撮・のぞきを行ってしまいご不安な方は,まずは一度ご相談ください。