盗撮・のぞき

性犯罪というと不同意性交等罪(改正前刑法のもとでは強姦罪や強制性交等罪と規定されていました)や不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)をイメージされる方も多いかもしれませんが,盗撮,のぞきもれっきとした性犯罪です。

盗撮のぞきも,基本的に被害者に気づかれないように行われるため,ばれなければいいと犯行を心理的に後押ししてしまう面もあります。

また,最近ではカメラの高性能化・小型化やスマートフォンが普及したことにより,誰もが盗撮・のぞきの加害者になる場合がありえます。

ここでは,盗撮・のぞきを規制する法律や,どのような場合に犯罪が成立するかを確認していきましょう。

盗撮・のぞきを規制する法律

盗撮・のぞきは犯罪ですが,刑法に規定されているわけではありません。

盗撮の一部については、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下、「性的姿態撮影罪」といいます。)によって規制されます。

同法2条1項は、以下の行為をした者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処するとしています。

(1) 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくはこう門若しくはこれらの周辺部、でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法177条1項に規定する性交等をいいます。)がされている間における人の姿態
(2) 刑法176条1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
(3) 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
(4) 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

これらの行為の未遂も処罰されます(同条2項)。

公衆便所や、公共の場で通行している人の、性器を覆っている下着を相手に気づかれないように撮影する行為は規制対象となります。一方、屋外でスポーツをする選手の臀部を撮影するのは規制対象にならないものと考えられます。

マッサージや治療行為中に、その一環と思わせて性器を撮影する行為も規制対象となります。

その他の盗撮やのぞきを規制しているのは,各都道府県で制定されたいわゆる迷惑防止条例軽犯罪法になります。

千葉県の場合,「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」で盗撮・のぞき行為が規制されます。

同条例3条の2は「何人も、みだりに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次の各号に掲げるものをしてはならない。」としています。

具体的には,

浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を身に着けない状態でいる場所及び住居

公共の場所公共の乗物

学校

事務所

その他の不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りすることができる場所

タクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用することができる乗物

において,人の通常衣服で隠されている下着又は身体を,写真機その他の機器を用いて撮影したり撮影する目的で写真機等を差し向けたり設置したりすることを禁止し(盗撮),人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすることを禁止しています。

そして,撮影した場合は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。(同条例13条1項)

写真機等を差し向け、設置した場合や卑わいな言動をした場合は,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます(同条例13条の2第1項)。

各自治体が定める迷惑行為防止条例は,おおよそ同じような規律になっています。

しかし,自治体によっては、条文が若干異なります。

例えば東京都では「公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。」として盗撮という犯行態様を別個に規制しています。

盗撮行為が性的姿態撮影罪と迷惑防止条例双方に違反する場合、刑罰の重い性的姿態撮影罪により処罰有れます。

のぞき行為は,「前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。」として規制されています。

迷惑行為防止条例違反公共の場におけるのぞき行為を規制しています。

それゆえ,風呂場をのぞいたりする行為は,迷惑防止条例では規制されません。

この場合は軽犯罪法で規制がされます。同法1条23号は「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を規制しているため,いわゆるのぞき行為は軽犯罪法違反になります。

なお,盗撮・のぞき建物への立ち入りが伴う場合,迷惑行為防止条例違反軽犯罪法違反とは別に,住居侵入罪・建造物等侵入罪(刑法130条)も成立するため注意が必要です。

このように,同じ盗撮・のぞき行為といっても,どこで行うかによって規制根拠が法律か条例かの違いが生じます。

冒頭でも述べましたが,現在は盗撮・のぞきに悪用できる機器の高度化,普及が進んでいるため,前科がなくても魔が差してこれらの犯罪を行ってしまうことはありえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では,刑事事件を扱う弁護士事務所として,被害者との示談を始めとして,迅速な対応に努めます。

盗撮・のぞきを行ってしまいご不安な方は,まずは一度ご相談ください。

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