器物損壊罪で告訴取消し

器物損壊罪で告訴取消し

会社員のAさんは、千葉県柏市に住む上司のVさんに理不尽なことで怒鳴られて鬱憤が溜まっていました。
そこで、Vさんに嫌がらせをしようと思い、ひとまずVさんの後をつけて自宅を突き止めました。
そして、数日後の日中、周囲に人がいないのを見計らってVさんの車(200万円相当)に10円玉で多数のひっかき傷をつけました。
その夜にVさんが傷に気づいて柏警察署に相談したため、Aさんは器物損壊罪の疑いで捜査を受けることになりました。
Aさんから相談を受けた弁護士は、告訴の取消しを見据えて弁護活動を行うことにしました。
(フィクションです。)

【器物損壊罪について】

他人の物を「損壊」した場合、器物損壊罪が成立する可能性があります。
対象となるのは動物を含む様々な物ですが、公用文書、私用文書(たとえば借用書)、建造物は除きます。
これらの物は、その重要性に鑑みて器物損壊罪より重い損壊罪が別個に定められているからです。

器物損壊罪における「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為を指すと考えられています。
つまり、世間一般に言う「壊す」行為に限らず、たとえば物を汚したり傷つけたりして外観を損なわせるような行為も「損壊」に当たる可能性があるということです。
実際に「損壊」に至ったかを判断するに当たっては、損壊の内容、程度、回復の難易などの事情が考慮されます。
たとえば、水で洗い流せば簡単に落とせるような汚れであれば、そのことは「損壊」を否定する事情と考えられます。
ただし、汚損に対する心理的な抵抗感を考慮されることはあり、裁判例では食器に放尿したケースで器物損壊罪の成立を認めたものがあります。

上記事例では、AさんがVさんの車に10円玉で多数の傷をつけています。
傷が多数に及ぶことや、簡単に修復できるものではないことを考慮すれば、Aさんの行為は「損壊」に当たると評価できます。
そうすると、Aさんには器物損壊罪が成立し、3年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、科料のいずれかが科されるおそれがあります。

【器物損壊罪と告訴】

器物損壊罪は、起訴をするうえで告訴を要する親告罪という類型に属します。
つまり、被害者などが告訴をしなければ、検察官が起訴して裁判にもっていくことができないということです。
親告罪とされている理由は様々ですが、器物損壊罪に関して言うと侵害される利益が軽微だからだと説明されます。

器物損壊罪が告訴を欠く場合、検察官としては不起訴の判断を下すことになります。
仮に告訴に欠けると気づかないまま検察官が起訴をしても、違法な起訴として裁判を行ってことはできません。
ですので、告訴の取消しが実現すれば、その後に有罪となって処罰を受けることはないと考えて差し支えありません。
ただ、そもそも告訴というのは処罰意思を表れであり、被害者との示談交渉は難航する可能性が相当程度あります。
そこで、告訴の取消しに向けた示談交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士が介入すれば、事件の当事者が直接接触して交渉を行う必要がなくなります。
ですので、当事者のいずれも精神的負担を軽減させることが期待できます。
それに加えて、示談によるメリットとデメリットを当事者にきちんと説明し、最適な示談交渉の方針を定めることができます。
示談交渉は一度決裂するとたちまち劣勢に立たされる面があるので、不安であればぜひ弁護士にご依頼ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件の豊富な経験を有する弁護士が、告訴の取消しを実現すべく真摯に示談交渉を行います。
器物損壊罪を疑われたら、刑事事件少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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