器物損壊罪は件数の多い犯罪の一つです。
器物損壊というと,金属バットで窓ガラスを割るような行為をイメージされるかもしれません。
しかし,器物損壊罪に問われる行為は,必ずしも物の破壊を伴うわけではありません。
ここでは器物損壊罪に問われる場合と,刑事事件になった場合の手続の進み方を見ていきましょう。
器物損壊罪に問われる場合
刑法261条は器物損壊罪を「他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と規定しています。
科料とは1000円以上1万円未満の金銭を支払う刑罰であり(刑法17条),1万円以上だと罰金になります(刑法15条)。
「損壊」とは物の効用を害する行為を指します。
効用を害すればよいので,必ずしも破壊する必要はありません。
窓ガラスにビラを貼り付ける,ペンキで落書きをするといった行為も,裁判上,器物損壊罪に当たるとされています。
「傷害」は動物を客体とした場合を指します。
法律上は,動物も生き物ではなく「物」として扱われるため,他人のペットに怪我をさせることは器物損壊罪に該当します。
また,飼育されている動物を勝手に逃がす行為も器物損壊罪として扱われます。
他にも,人の物を盗むことは窃盗罪(刑法235条)に該当しますが,盗んだ物を利用するためではなく,単に嫌がらせのために隠したような場合は,窃盗罪ではなく器物損壊罪が成立します。
客体が公用文書,私用文書,建造物の場合は,それぞれ公用文書毀棄罪(刑法258条),私用文書毀棄罪(刑法259条),建造物等損壊罪(刑法260条)が成立します。
つまり,これら以外の物を損壊した場合に,器物損壊罪が成立することになります。
公用文書毀棄罪等は器物損壊罪と刑が異なるため注意が必要です。
器物損壊罪は親告罪であるため(刑法264条),被害者の告訴がなければ刑事裁判になることはありません。
器物損壊罪は被害が軽微であることも多いため,被害者が特に告訴をした場合のみ,検察官に起訴されて裁判になる可能性があります。
それゆえ,被害者との示談を早急に行い,告訴を取りやめてもらうことが刑事事件化を回避する確実な方法になります。
なお,公用文書毀棄罪や建造物等損壊罪は親告罪ではないため,被害者の告訴の有無にかかわらず起訴されることがありえます。
このように,器物損壊罪は被害者との示談がその後の見通しに大きく影響するため,法律の専門家である弁護士に依頼して示談を進めることをお勧めします。
また,器物損壊罪と建造物等損壊罪の区別が難しい場合もあるため,弁護士から助言を受けた方が無難です。
例えば,玄関ドアを破壊する行為は,器物損壊罪ではなく建造物等損壊罪に該当するため,親告罪ではないことになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では,刑事事件を扱う弁護士事務所として,迅速な示談交渉による裁判回避を目指します。
器物損壊でお悩みの方は,ぜひ一度ご相談ください。