赤ちゃんを放置して死亡させた母親を逮捕~千葉県市川市で起きた殺人事件~

赤ちゃんを放置して死亡させた母親を逮捕~千葉県市川市で起きた殺人事件~

赤ちゃん 放置 殺人罪

今回は、千葉県市川市で起きた殺人事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。

<事案の概要>

先月、千葉県市川市の住宅から生後まもない赤ちゃんの遺体が見つかり、22歳の母親が逮捕された事件で、きょう、警察は母親を殺人の疑いで再逮捕しました。

殺人の疑いで再逮捕されたのは、無職の容疑者A(22)です。

Aは今年5月30日に市川市曽谷の住宅で女の子の赤ちゃんを出産したにもかかわらず、救護措置を取らず、そのまま放置し殺害した疑いがもたれています。

(中略)

取り調べに対し、Aは「どうしていいかわからなかった」と容疑を認めているということです。
(※7/1に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「「どうしていいかわからなかった…」千葉・市川市の住宅から女児遺体 出産後に放置して交際相手の自宅へ 22歳の女を殺人の疑いで再逮捕」記事の一部を変更して引用しています。)

<放置しただけでも殺人罪が成立する?>

皆さんの中には、「放置しただけで殺人罪は成立するの?」と思う方もいるかもしれません。
結論から言うと、このような場合にも不作為による殺人として殺人罪成立する可能性があります。

まずは殺人罪についてみてみましょう。

刑法第199条(殺人)

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

本件では、結果的に赤ちゃんは死亡しています。

もっとも、上記のように殺人罪は「人を殺した者」と規定しているため、何らかの作為によって殺人行為をすることを想定しています。
そのため、ただ放置しただけでは殺人罪が成立しないともいえそうです。

しかし、不作為によってもこのような法益侵害は可能とされているため、不作為による殺人罪成立するとされています。

作為による犯罪実現を想定している犯罪を不作為で実現することを不真正不作為犯といいます。
反対に、不作為による犯罪実現を想定している犯罪を真正不作為犯といい、不退去罪がこれにあたります。

<不作為による殺人が成立する場合とは?>

では具体的にどのような場合に不作為による殺人罪が成立するのでしょうか。
不作為犯を広く認めると刑法の自由保障機能(犯罪として予め明示された行為以外は罰しないというもの)が害され、人々の自由を過剰に制限することになりかねません。

そこで、不作為犯の成立には様々な条件があります。
ここでは、その内の作為義務作為の可能性・容易性について解説していきます。

①作為義務
作為義務は、法令、先行行為、排他的支配や保護の引き受け等がある場合に認められます。

②作為の可能性・容易性
作為の可能性・容易性については、作為が可能であったかどうか(泳げない人におぼれている人を助けることは作為可能性がない)、作為に出ることが容易であったかどうかという点から判断されます。

本件に当てはめると、母親には赤ちゃんに対する排他的支配が認められるため作為義務があります。

また、赤ちゃんを助けるために病院に連れて行く、救急車を呼ぶことは可能かつ容易であるため作為の可能性・容易性が認められます。
そのほかの不作為犯の要件も満たすため、不作為による殺人罪が成立する可能性があります。

もっとも、本件においては殺意があったかについては明らかではありません。
上述した殺人罪には人を殺すことについての殺意が必要です。
当初、死体遺棄の疑いで逮捕し、その後に殺人罪で再逮捕したのはこの点に問題があったからかもしれません。

<事務所紹介>

今回は、不作為による殺人罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説しました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に特化した専門の法律事務所です。
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千葉県内で刑事事件を起こしてしまったという方や、ご家族が刑事事件を起こして逮捕されてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部までご相談ください。

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