出火により住宅全焼といった報道はよく目にしますが,火が関わる犯罪は時として甚大な被害が生じます。
それゆえ,放火の罪には重い罰則が定められています。
ここでは,放火・失火について,どのような場合に犯罪が成立するのかを見ていきましょう。
どのような場合に犯罪が成立するのか
刑法は火災に関わる罪を以下のように区分しています。
まずは,出火が意図的なものか過失によるものかで,放火と失火に区別されます。
次に,放火の対象が建造物かそれ以外のものかで区別されます。
最後に,放火の対象が建造物の場合に,そこに人が住んでいたかで区別されます。
意図的に人が住んでいる建造物へ放火した場合,現住建造物等放火罪に該当します。
刑法108条は現住建造物等放火罪について,「放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定しています。
死刑又は無期若しくは5年以上の懲役という刑罰は殺人罪(刑法199条)と同様であり,刑法の中でも非常に重い部類の刑罰になります。
執行猶予となって懲役刑を回避できるのは,3年以下の懲役刑が宣告された場合に限られます。
それゆえ,現住建造物等放火罪に問われると,特別な減軽事情がない限り,実刑は避けられないのです。
焼損とは,燃え移った火が媒介物を離れて独立に燃焼を継続する状態になったことを言います。
焼損に至ると放火は既遂になります。
床板や柱の燃焼をもって焼損と判断した裁判例もあります。
焼損というと,全焼やそれに近い結果をイメージしがちですが,放火が既遂になる時期は思った以上に早いことには注意が必要です。
人が住んでいない建造物に放火した場合,非現住建造物放火罪となり,2年以上の懲役となります(刑法109条1項)。
建物が放火を行った者の所有にかかる場合,6月以上7年以下の懲役となります。
また,公共の危険を生じなかった時にはそもそも処罰されません(刑法109条2項)。
建造物ではなく,車やバイクなどに放火した場合は1年以上10年以下の懲役となります(刑法110条1項)。
自身の所有物に放火した場合は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科せられます(刑法110条2項)。
以上が意図的な放火の罪であり,過失による失火であれば50万円以下の罰金になります(刑法116条)。
なお,いわゆる失火責任法は刑事事件ではなく,民事損害賠償責任について規定した法律になります。
以上のように,放火の罪の多くは罰金刑の定めがないため,裁判で有罪になれば懲役刑の選択しかありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では,刑事事件を扱う弁護士事務所として,事件の内容に応じた適切な取調べ対応をお伝えします。
放火の罪に問われないかご不安な方は,まずは一度ご相談ください。