痴漢で逮捕されたという事件報道はよく耳にするかと思います。
ところで,痴漢行為は何の法律を根拠に処罰されるのでしょうか。また,実際に痴漢で逮捕された場合には,どのように手続が進むのでしょうか。
ここでは,痴漢が刑事事件化した場合について見ていきましょう。
痴漢行為を規制する法的根拠について
痴漢罪という罪名があるわけではありませんが,痴漢行為は都道府県が制定する迷惑行為防止条例に違反します。
例えば,千葉県では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」の中で,「何人も,女子に対し,公共の場所又は公共の乗物において,女子を著しくしゆう恥させ,又は女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。男子に対するこれらの行為も,同様とする。」と規定されており(同条例3条2項),違反者は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(同条例13条1項)。
ところで,刑法にも強制わいせつ罪が定められています(刑法176条)。
こちらは6月以上10年以下の懲役に処せられるため,条例違反よりも重くなります。
一般に,着衣の上から身体を触った場合には条例違反,着衣の中に手を入れて触れた場合には強制わいせつ罪に該当すると言われています。
また,強制わいせつ罪では,被害者が13歳未満の場合,被害者の承諾があっても罪になります。
13歳未満の被害者では,真に行為の意味を理解して承諾しているとは類型的に考えにくいためです。
強制わいせつ罪は,かつては親告罪とされていました(改正前刑法180条1項)。
親告罪とは
親告罪とは,被害者が加害者に対して刑事処罰を求める意思表示をした場合(これを告訴と言います)のみ,検察官に起訴されて刑事裁判になる犯罪を指します。
それゆえ,刑法改正以前は,例えば示談が成立して被害者が告訴を取り下げた場合,刑事裁判になることはありませんでした。
現在は,非親告罪化されたため,被害者が告訴を行わなくても,検察官の判断次第で起訴されて刑事裁判になる可能性があります。
改正前は親告罪か否かで強制わいせつ罪と迷惑行為防止条例違反を区別することができましたが,現在は告訴の必要性の有無では違いがないことになります。
なお,親告罪とされていた改正前刑法のもとでも,いったん告訴がされてしまえば,強制わいせつ罪で起訴猶予になる可能性は10パーセントほどに止まります。
迷惑防止条例違反の場合は,起訴はされても罰金で済むケースがあります。
以上のように,一口に痴漢といっても,どのような罪名で逮捕されるかは行為の態様によります。
そして,迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪では,刑の重さを始めとした違いが出てくるため,罪名に応じた弁護活動が必要になります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では,刑事事件を専門に扱う事務所として,事件の内容に応じた適切な弁護活動を行います。
痴漢で逮捕されてしまった場合や,起訴されるか不安な方は,まずは一度ご相談ください。