【解決事例】交通事故から現行犯逮捕

【事案概要】

 Aさんは千葉県船橋市に買い物に行くために車を運転していました。
 信号機の設置された十字路交差点に差し掛かり、Aさんは交差点を右折するために、交差点中央付近で停止し、対向車と進行方向にある横断歩道の状況を確認しました。
 横断歩道上やその付近に歩行者はおらず、対向車線も、遠くにバイクが1台接近してくるだけだったため、先に右折できると考え、Aさんは車を発進させました。
 しかし、対向のバイクはAさんの目測よりも交差点の近くにいたようで、Aさんが右折を開始するや否や、Aさんの運転する車の左前部に衝突し、バイクの運転手も、固いアスファルトの路面に投げ出されてしまったのです。
 Aさんは大慌てで車を安全な場所に止め、警察に通報するともにバイクの運転手さんに近づいたところ、バイクの運転手さんは全身を強く打ち出血をし、意識も朦朧状態でした。
すぐに事故現場に到着した救急隊によりバイクの運転手さんは病院へ搬送され、Aさんは、現場に臨場した千葉県船橋警察署の警察官によって現行犯逮捕されることになってしまったのです。不幸にして、バイクの運転手さんが亡くなってしまい、過失運転致死事件として捜査されることになりました。

※守秘義務の観点から一部、事実と異なる記載をしています。

【Aさんの刑責】

 お酒を飲んでいたわけでも、とりわけ危険な運転をしていたわけでもないのに交通事故で現行犯逮捕と聞いて、疑問に感じる方も少なくないかと思います。
 そもそも、「交通事故は犯罪ではないはず」とお考えの方もいるかもしれません。
 しかし、それは適正な事故処理をすること相手方(被害者側)に怪我がないことが揃っている場合の話です。
 例えばですが、交通事故を起こしたにもかかわらず、警察に通報し事故処理をすることなく現場から立ち去った場合は事故不申告報告義務違反)として扱われますし、相手がいる事故であれば、ひき逃げ事故救護義務違反等)として扱われることになります。
 また、怪我がない事故であれば、物損事故として扱われ、任意保険に加入していれば、保険会社に連絡し、相手方との交渉を行ってもらうだけで事態は収束します。
 しかし、怪我がある交通事故の場合は、警察による実況見分取調べといった捜査が行われ、窃盗罪や暴行罪と言った刑事事件と同様に検察庁に送検されることになるのです。
 
 車を運転して、わざとではなかったとしても、事故を起こし相手に怪我をさせてしまった場合、「自動車の運転により人を死傷させる行為等に関する法律」という法律で扱われることになります。

過失運転致死傷罪
 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑責を免除することができる。
(自動車の運転により人を死傷させる行為等に関する法律 第五条)

 ここでいう必要な注意とは、通常、車を運転するうえで守らなければいけない注意義務のことを指します。
たとえば、安全確認をしなければならない過度な速度を出してはいけない(法定速度や指定速度を守らなくてはいけない)カーナビや携帯電話等を見る等、わき見運転をしてはいけないなどが挙げられます。

また、但し書きで、相手の怪我の程度が軽く、情状面でも悪質とは言えない場合(例えば、怪我と言っても打撲や擦り傷程度で済んだ場合、事故の原因がお互いの不注意であった場合など)には、刑罰までは科さないことがある、とされています。

【本件事例における当事務所の活動】

Aさんの逮捕当日、ご家族からのご依頼を受け、当事務所の弁護士がいち早く千葉県浦安警察署に留置されているAさんと接見をしました。
 依頼を受け接見に向かうまでの間に、Aさんは、バイクの運転手さんが亡くなられたことを警察から聞いたそうで、ひどく動揺した様子でした。

しかし、ご家族からの依頼を受け接見に赴いたことを伝えると、安心されたようで、弁護士が事故当時の状況や現場の様子などを覚えている限りのことを聞き取りました。

そして、具体的な弁護活動を行っていくのですが、残念なことに本件は被害者の方が事故の影響で亡くなられており、活動が困難であることが予想されました。
当ブログをお読みいただいている方なら察しが付くかもしれませんが、通常、被害者がいる事件であれば、加害者の代理人として当所の弁護士が接触をし、謝罪弁済示談交渉などを行っていきます。
しかし、今回では第一に謝罪をすべき、被害者の方がすでに亡くなられているのです。
また、突然の事故により被害者様を無くされた被害者様のご家族の悲しみは筆舌に尽くしがたく、お話をすることが出来る状態ではありませんでした。

そこで、まずは、AさんとAさんのご家族に協力をいただき、Aさんの勾留を解くことから開始しました。
Aさんは、普段、ご病気を抱える息子さんの看護を一身で行っており、Aさんが家にいないことによって、息子さんの体調が悪化する危険がありました。
さらに、Aさんは家事と看護の傍ら、家政婦として多くの家庭にお邪魔し、家事や育児のお手伝いをしていることからもAさんの勾留が長引くほど、多くの方の生活に支障をきたす恐れがありました。
また、すでに事故当時の車両や目撃者、事故当時の道路状況などは警察の捜査によりすでに証拠保全がされていました。
また、ご家族の方が、Aさんが日常生活に戻った後の監督を約束して下さったことなどを材料に、検察庁、裁判所に対しAさんの勾留を解くことの申請を行ったところ、事故発生後48時間という短い時間でAさんは自宅に戻ることが出来たのです

Aさんの身柄解放後は、時間をかけ被害者家族の選任した代理人へ、被害者様とご家族に対する謝罪をお伝えし続けました。

最終的に、Aさんへの処分は罰金に留まり、公開の法廷で裁かれたり刑務所に送られたりするリスクを回避することができ、日常生活に復帰することが出来ました。

令和3年の全国の交通事故による死者数は2,636人、重傷者数は27,204人にのぼります。
死亡者数においては、5年連続で減少しており、最少人数であると発表されています。
しかし、全国的に見て、2,636人の方が命を落とされていることが現状です。
亡くなられた方1人1人に家族がいて、友人がいて、生活があります。
ほんの一瞬の油断や気の緩み、大丈夫だろう、事故は起こさないという慢心であったとはいえ、相手の方やご家族のそれまでの生活や今後の未来までも全て失くしてしまうことになります。
そして、事故を起こしてしまった人も、亡くなられた方の命の重さを感じながら残りの人生を歩むことになりますので、くれぐれも気を付けて運転して頂けたら幸いです。

万が一、交通事故により相手を怪我させてしまった、何らかの罪を犯してしまった。そのような場合、出来るだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

いち早く弁護士に相談することにより、処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ、その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
また、取調べの対応方法や供述内容に対するアドバイスを受けることで、誤解を招くような供述を避けることが出来ます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部の弁護士は日頃より刑事事件を数多く受任し、扱ってきた実績がございますので、どのような事件でも安心してご相談頂けます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は千葉県内のみならず、全国各地に事務所があり、初回無料法律相談も行っておりますので、お困りの方は、0120-631-881までお気軽にお電話ください。

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