他人に譲渡する目的で銀行で口座を開設した場合の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説致します。
千葉市中央区の口座譲渡事件
大学生Aさん(20代・男性)は、SNS上で
「誰でも簡単にできる副業」
という募集を見つけました。
その内容は、銀行で口座を新規開設し、開設した口座のキャッシュカードや通帳を送付するというものでした。
Aさんは、手あたり次第の銀行で口座を開設し、開設した口座のキャッシュカードや通帳を業者Xへ送付しました。
しかし、Xから報酬が振り込まれることはなく、Aさんは警察へ被害届を出そうと思い、千葉中央警察署へ向かいました。
しかし、警察からは
「あなたが行った行為は、犯罪収益移転防止法違反や、詐欺罪にあたる可能性があります。」
と言われ、被疑者として扱われることになりました。
途方にくれたAさんは、刑事事件を扱う法律事務所に相談することにしました。
(フィクションです。)
詐欺罪は成立するのか
刑法 246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
Aさんの刑事事件例において、Aさんは、あらゆる銀行のキャッシュカードと通帳を作っていますが、それらの銀行に金銭的な損失を与えたわけではありません。
しかし、詐欺罪の成立要件は、他人を欺いて誤信させ、その誤信に基づいて財物を交付させることです。
そのため、銀行を欺いてキャッシュカードや通帳を交付させた場合、詐欺罪が成立する可能性があります。
通常ならば、銀行口座の開設目的が、第三者に譲渡する目的であった場合、銀行は銀行口座の新規開設を認めないはずです。
そのため、目的を隠して、銀行に対し口座開設の申込みを行う行為は、詐欺罪でいう人を欺く行為であると考えてよいでしょう。
よって、千葉市中央区のAさんの行為は、詐欺罪に当たると考えられます。
(参考 平成19年7月17日 最高裁判所決定)。
また、通帳及びキャッシュカードは、それ自体所有権の対象となるばかりか、これを利用して、預金の預け入れ、払い戻しを受けられるなどの財産的価値を有していることから、詐欺罪における「財物」に当たるとされています。
(参考 平成14年10月21日 最高裁判所決定)。
詐欺罪で有罪判決が下された場合、10年以下の懲役刑に処せられます。
近年では特殊詐欺事件に対する処罰が非常に厳しくなっており、特殊詐欺に加担する行為も同様に厳しく処分される傾向にあります。
「初犯だから」「そんなに重い犯罪だとは思わなかった」という楽観的な考えは通用しないでしょう。
口座の譲渡は罪になるのか
上記したAさんのように、銀行口座を譲り渡す行為は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下「犯収法」といいます。)に違反する行為です。
犯収法28条2項では、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者に対する罰則を定めています。
預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供したことで、有罪判決が下された場合、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金が科される可能性があります。
事件例のAさんは、過去に通帳を作って送る行為を何度も繰り返し行っていました。
しかし、銀行口座を開設する際、銀行からは口座開設の目的を聞かれたり、預金口座の譲渡・売買等の不正行為は行わないように説明を受けているはずです。
Aさんの行った行為は、「犯罪だと思わなかった」では済まないでしょう。
事件を起こしてしまったら
詐欺罪や犯収法違反の罪に問われている場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部の無料法律相談をご利用下さい。
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