ゴミ捨て場の自転車を持って帰るとどうなる?~千葉県木更津内の事件~

 ゴミ捨て場に粗大ゴミとして出された自転車を「捨てられてるなら大丈夫」と自分のものにしてしまった場合、どのような罪に問われてしまうのでしょうか。
 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。

~木更津市内での事件~

 Aさん(20代・学生)は、ある日のアルバイトから帰宅するとき、すでに日付が変わってしまっていました。
 アルバイト先から自宅まで歩いていると、ふと、ゴミ捨て場に無施錠状態の自転車が置かれているのを見つけました。
 自転車には木更津市が発行している粗大ゴミシールが貼られており、翌日、回収される予定のものだと一目でわかりました。
 そこでAさんは、「どうせ捨てられるのなら自分が乗って帰っても大丈夫だろう」と考え、その自転車を乗り出しました。
 多少錆びていましたが、パンクなどもしていない自転車をこぎ自宅へ向かっていたところで、警察官から呼び止められ、職務質問を受けてしまいました。
 そして、Aさんが他人の自転車を不当に持ち出したことがバレてしまったのです。

本件はフィクションです

~解説~

 今回のケースでは、ゴミ捨て場に粗大ゴミ回収のために置かれていた自転車の所有権(占有)がどうなっているのかが問題となります。

 ゴミとして捨てられているのだから、誰の持ち物でもないと考えると、占有離脱物横領罪(≒遺失物横領罪)が検討されます。

遺失物横領罪(刑法第254条)

 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する

 ここで言う他人の物とは、誰かの所有権に属する物であり、誰の所有物でもない物はこれに当たりません。
 従って、捨てられた物は元の持ち主が所有権を放棄した物とも見ることができ、これを勝手に持って帰っても、遺失物等横領の「他人の物」に当たらず,何の犯罪も成立しないのではないかとも考えられます。

「区民が,古紙等の資源を収集日に資源・ごみ集積所に排出するのは、これを再生利用の目的となる有価物のものとして。区の収集・回収によるリサイクル事業に委ねるためであるから、区又はその委託を受けた収集運搬業者が資源・ごみ集積所からこれを収集してその占有下に収めるまでは、一般に、区民は、なお継続してこれを所有占有しているものとみるべきである」

とされ,収集されるまでの間は,まだゴミを捨てた者に所有・占有があるものとされました。
 

 この判決以外にも、ゴミ捨て場に捨てられたゴミについては、収集されるまではゴミを捨てた者に所有・占有があるという下級審判決がいくつか出ています。
このように見ると,ゴミ捨て場からの持ち去りは、占有離脱物横領(≒遺失物等横領)の問題になり得るばかりか、窃盗の問題ともなり得るということになります。

窃盗罪(刑法第235条)

 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 
 仮に捨てられていたものであったとしても、誰かの所有物と認められた場合、窃盗罪や占有離脱物横領罪(≒遺失物横領罪)として罪に問われてしまう場合があります。
 起訴されてしまえば、当然、前科がつくことになってしまいますし、罰金や科料を収めたり、懲役刑に処されてしまう場合があるため、注意が必要です。

~警察官の職務質問とはなにか? 拒否することはできる?~

 警察官による職務質問を断ったからといって、すぐさま身柄を拘束されることはあり得ません。
 そもそも職務質問とは、犯罪の予防」「犯人の検挙」「犯罪の捜査のためのものであり、警察官職務執行法第2条
   1項 質問権
   2項 同行要求件
   3項 強制の禁止
   4項 凶器の送検

と、それぞれの方法や限界についてが明確に定められています。
 また、あくまでも職務質問は警察官が市民の同意を得て行っている任意の警察活動であり、職務質問を受ける人が承諾しなければ実施することが出来ません
 職務質問を断るのに特に理由は必要なく「質問に答えたければ答えても良い」というものなのです。
 しかしながら、何らかの嫌疑により職務質問を受けた場合には、公共の安全と福祉のため、不審点を解明することが警察の責務である以上、嫌疑が晴れるまで、職務質問が継続されることもあります
 疑われる要因が何もないのであれば断ることもできます。ただし、もし、何らかの嫌疑がかかっていた場合、職務質問を断ったことが、「逃走したり証拠を隠滅したりするかもしれない」という新たな疑いに変わってしまい、身柄が拘束される可能性もある、ということは覚えておいた方が良いかもしれません。

~ご家族が事件を起こしてしまったら~

 もし、ご自身や大切なご家族が何らかの事件を起こしてしまった場合、ぜひ、あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部へご相談下さい。
 
 お電話にてご予約後、弊所事務所へご来所いただき、刑事事件に精通した弊所の弁護士へ無料で相談することができます。
 無料相談の際には、事件内容を確認すると共に、今後行われる取調べの対応についてのアドバイスや、事件の見通しをお話させていただきます。事前に対応方法や見通し状況を把握しておくことで、落ち着いて対応することが出来るようになるかと思います。

 また、もし逮捕されてしまっていた場合は、有料での初回接見サービスをご利用いただけます。

 こちらは、お申込み後、最短即日、刑事事件に精通した弊所弁護士を逮捕されてしまったご家族のもとへ派遣し、事件内容確認や、今後の対応についてのアドバイス事件の見通しなどをお話させていただきます。

 刑事事件の被疑者として逮捕されてしまった場合すぐに警察の取調べなどの捜査が行われることになります。相談する相手のいない状況で一人で対応することは精神的な負担も大きく、また、逮捕され動揺しているときに曖昧な供述などでご自身の立場が殊更に悪くなってしまうおそれもあります。逮捕後すぐに弁護士と相談をすることで、そういった事態を避けることにも繋がります。 
 
 その後、もし、正式に弁護人としてのご依頼を頂いた際は、事件の終局に向けた示談活動や裁判に向けての準備など、ご本人様に科される刑罰が少しでも軽くなるための弁護活動を致します。

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