他人に銀行口座を譲渡するのは犯罪?

他人に銀行口座を他人に譲渡し、犯罪収益移転防止法違反となった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。

千葉県旭市の犯罪収益移転防止法事件

千葉県旭市在住のAさん(20代・女性)は、SNS上で「あなたの銀行口座買います!」という投稿を見つけました。
Aさんは数年前に千葉銀行や京葉銀行の口座を開設したのですが、開設後ほとんど使用していませんでした。
Aさんは、投稿者であるXさんに連絡を取り、使用していない銀行口座のキャッシュカードや暗証番号を譲り渡しました。
当初、AさんはXさんから「1万円で銀行口座を買い取る」という話でしたが、1か月以上経ってもXさんからお金が振り込まれることはありませんでした。
ある日、Aさんのもとに、千葉銀行から「口座を凍結する」という連絡があり、Aさんの銀行口座が犯罪に使用されている可能性があることを知りました。
Aさんは事件の被害に遭ったと思い、千葉県旭警察署に被害届を提出しに行きました。
しかし、旭警察署の警察官の方からは
「あなたの行ったことは、犯罪収益移転防止法違反に当たります。」
と言われてしまい、後日、取り調べを受けることになりました。
不安になったAさんは、刑事事件を扱う法律事務所に相談することにしました。
(フィクションです。)

犯罪収益移転防止法

他人に銀行口座を譲渡するといった行為は犯罪収益移転防止法違反となります。
犯罪収益移転防止法とは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」の略称です。

この法律の第28条では、銀行口座の譲受や譲渡を禁止しています。


犯罪による収益の移転防止に関する法律

第28条 第1項
他人になりすまして特定事業者(略)との間における預貯金契約(略)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、
当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(略)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。

同条 第2項
相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。


 

まず、第28条第1項では、他人になりすまして、預貯金の預け入れ、引き出しなどをするため、または、第三者にこれらをさせるために、預貯金通帳等を譲り受ける等した場合や、正当な理由がないのに、預貯金通帳等を譲り受けることを禁止しています。

そして第2項で、他人になりすまして、預貯金の預け入れ、引き出しなどをするため、または、第三者にこれらをさせることを知って、他人に銀行口座を譲渡することを禁止しています。
Aさんの行為は、この2項に違反することは間違いないでしょう。

銀行口座を譲受・譲渡する行為は、有罪となれば1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金が科せられ、場合によっては懲役刑と罰金刑の両方が科せられる(併科)こともあります。

 

犯罪収益移転防止法違反で逮捕されるの?

他人に譲渡した口座は、振り込め詐欺等の犯罪に利用される場合がほとんどです。
上記のAさんのように、他人に銀行口座を譲渡したような犯罪収益移転防止法違反事件で逮捕される可能性は低いようです。
しかし、詐欺グループと近い関係にあったり、複数の銀行口座を他人に譲渡しているような場合は、逮捕される可能性もあるので注意が必要です。

詐欺罪で立件された場合、起訴される可能性も

上記したAさんは、もともと持っていた銀行口座を他人に譲渡していますが、仮に、他人に譲渡する目的を隠して、銀行口座を開設した場合、銀行に対する詐欺罪が成立します。
なぜならば、金融機関で口座を開設する際に、行員に対し「銀行口座の使用目的」を偽って口座開設をするため、その口座は銀行から騙し取ったものとして考えられるからです。
詐欺罪は刑法に定められた罪で、有罪となった場合10年以下の懲役が科されます。

千葉県内での犯罪収益防止法での送致人員

千葉県警察本部の発表によると、犯罪収益移転防止法違反での送致件数は、令和元年が96件だったのに対し、令和2年は107件と11.5%増えたようです。
犯罪収益移転防止法違反で検挙された被疑者のなかには
「自分は詐欺の被害者だと思っていた。」
と、自分が犯罪に加担していたという自覚がない方も多いようです。

また、犯罪に利用される等して自身の銀行口座が凍結されてしまうと、その口座での取引が一切できないのは当然のこと、同一名義人の口座が全て凍結されてしまったり、新たに銀行口座を開設することすらできなくなったりと、その後の私生活において大きな影響がでてしまいますので、他人に銀行口座を譲渡する行為は絶対にしないでください。
インターネットや掲示板や、SNS等では
「銀行口座を送れば融資します。」
「使わなくなった銀行口座を買い取ります。」
といった書込みがあるようですが、有償、無償を問わず、銀行口座の譲渡は犯罪です。

犯罪収益防止法事件を起こしてしまったら

銀行口座を他人に譲渡し、犯罪収益移転防止法違反で警察から取り調べを受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部無料法律相談をご利用下さい。

弊所の無料法律相談では、弊所の弁護士が銀行口座を譲渡したご本人様から、事件の内容についてお話を伺い、今後の事件の見通しなどをご説明をさせていただきます。
その後、正式に弁護人としてのご依頼をいただいた際は、ご本人様に科される刑罰が少しでも軽くなるための刑事弁護活動をさせていただきます。

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