千葉市中央区で起きた未成年者誘拐事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
【刑事事件例】
千葉市中央区に住むAさんは、令和4年3月30日に、同じ千葉市中央区に住む高校3年生の18歳のVさんが、「親がウザい」「家出をしたい」とSNSで発信しているのを見つけました。
Aさんは、Vさんが18歳であることを知りながら、「自分の家においでよ」「来てくれたら好きな物食べさせるよ」「ウチにスクーリングがあるから、それで一緒に大好きなアイドルのライブを見よう」とVさんにSNSのチャット機能を通してメッセージを送りました。
同日、Aさんは、誘いに応じて両親に無断で待ち合わせ場所の本千葉駅に来たVさんを、自身の家に連れて行き、一晩Vさんを宿泊させました。
数日後、Aさんは、帰宅したVさんから、親が今回の家出でAさんの家に行ったことについて、千葉県千葉中央署に被害届を出したというメッセージを受け取りました。
今後のことが心配になったAさんは、刑事事件を扱う法律事務所に相談に行くことにしました。
(この刑事事件例はフィクションです)
【家出をしたがっている未成年者を自宅に呼ぶことは罪になるのか】
刑事事件例のAさんには、刑法224条が規定する未成年者誘拐罪が成立する可能性があります。
刑法 224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
刑法224条は、未成年者 を 略取 した場合か、あるいは 誘拐 した場合に成立します。
略取 とは、暴行・脅迫を用いて、未成年者を現在の生活環境から離れさせて、自己または第三者の事実的支配に置く行為をいいます。
誘拐 とは、偽計・誘惑を用いて、未成年者を現在の生活環境から離れさせて、自己または第三者の事実的支配に置く行為をいいます。
刑事事件例では、「好きな物食べさせるよ」「好きなアイドルのライブを一緒に見よう」というような誘い文句で、Vさんが現在住んでいる家から離れさせて、Aさんの家に連れて行くことでVさんを事実的支配に置いていますので、Aさんの行為は誘拐に当たる可能性が高いと言えるでしょう。
なお、刑事事件例では、VさんがAさんの誘いに乗ったとしてもVさんが自ら進んでAさんの家へと向かっているわけですから、このような未成年者本人の同意があることで、未成年者誘拐罪は成立しないと思われる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、刑法224条は、未成年者の自由を守ることに加えて、監護権を有する者の監護権を守ることをも目的とした規定です。
そのため、刑事事件例のように監護権者であるVさんの両親に無断でVさんを連れ出す行為は、Vさんの両親の監護権を侵害するものになりますので、これを理由に処罰されることになるでしょう。
【成人年齢の引き下げについて】
刑法224条の 未成年者 の意味については、民法4条が成人年齢を20歳と定めていますので、令和4年3月31日までは、20歳未満の者が 未成年者 ということになります。
令和4年4月1日からは、既に御存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、民法の規定が改正されて成人年齢が20歳から18歳へと引き下げられることになります。
これに伴って、刑法224条の 未成年者 の意味についても、20歳未満の者から18歳未満の者へと変更されることになります。
これは、令和4年3月31日までは処罰の対象になっていた18歳・19歳の者に対する略取又は誘拐行為を、令和4年4月1日から刑法224条による処罰の対象から外すことを意味します。
ただし、刑法224条の 未成年者 が18歳未満の者を意味するというのは、令和4年4月1日以降に18歳・19歳の略取又は誘拐行為をした場合になります。
刑事事件例のように、被害届が警察に出された日や警察が捜査を開始した日が令和4年4月1日以降であっても、略取・誘拐行為が令和4年3月31日までに行われていれば 未成年者 は20歳未満の者を意味することになります。
したがって、令和4年3月31日までに18歳・19歳の者を略取又は誘拐行為をした場合は、224条による処罰の対象になります。
【未成年者誘拐罪でお困りの方は】
未成年者誘拐罪の法定刑は、懲役3月以上7年以下と懲役刑のみ規定されています。
このように罰金刑が定められていない犯罪については、略式起訴で罰金を納付すれば事件が終了するということにはならず、起訴されると必ず正式な裁判が開かれることになります。
未成年者誘拐罪について被害届を出された、あるいは警察が捜査を開始したという事実を知った場合には、事件の見通しや今後の対応などについて、弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部の無料法律相談のお申込みは、24時間・年中無休で受付しております。
千葉市中央区で、未成年者誘拐罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部まで、一度ご相談ください。