未成年者誘拐罪

未成年者誘拐罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。

Aさんは、SNSで「家出をしたい」と投稿していたVさん(12歳)に対して、「うちに来ない?」とメッセージを送って近所の公園に誘い出したうえで自宅に宿泊させ、さらにVさんからスマホや靴を取り上げて自宅から出られなくさせたとして未成年者誘拐罪で逮捕されました。
(フィクションです。)

~未成年者誘拐罪~

未成年者誘拐罪は刑法224条に規定されています。

刑法224条
未成年者を略取し、誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

「未成年者」とは20歳未満の者をいいます。
「略取」とは、略取された者の意思に反する方法、すなわち暴行、脅迫を手段とする場合や、誘惑に当たらない場合でしかも相手方の真意に反する方法を手段として、未成年者を自分や第三者の支配下に置くことをいいます。
「誘拐」とは、欺罔(騙すこと)や誘惑を手段として、他人を自分や第三者の支配下に置くことをいいます。「誘拐」と「略取」とをあわせて「拐取」ということもあります。
Aさんように、未成年者であるVさんに対して「うちに来ない?」という内容のメッセージを送ることで誘惑し、自宅に連れ込んだ行為は「誘拐」に当たるものと考えられます。VさんがAさんの自宅へ行くことにつき同意していたという場合であっても誘拐に当たることに変わりありません。なぜならば、略取・誘拐罪の保護法益には被害者の自由だけでなく、親権者の保護監督権も含まれると考えられているからです。したがって、VさんがAさんの自宅へ向かうことについて同意していたとしても、Vさんの親が承諾していない以上、やはり未成年者誘拐罪が成立する可能性が高いです。

もっとも、未成年者誘拐罪は、検察官の起訴に告訴を必要とする親告罪です。
告訴は、法定代理人(被害者が未成年者の場合は、通常、その親)は未成年者の告訴意思にかかわりなく告訴することができます。
したがって、未成年者誘拐罪の場合、親が捜査機関に告訴状を提出していることが多いでしょう。
親がその告訴状を取り消した場合は、刑事処分は不起訴となります。

~監禁罪との関係~

事例では、誘拐行為の後にAさんがVさんを自宅に監禁するという監禁行為が行われています。
この監禁行為につき、誘拐罪とは別に監禁罪が成立するでしょうか。

一連の行為が複数の犯罪に当たりうるという場合、主に①観念的競合、②牽連犯、③併合罪という三つの処理がされることになります。
①観念的競合とは、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合をいい、例えば、職務執行中の警察官に対して暴行を加えてけがをさせたという場合には、暴行という1個の行為が公務執行妨害罪と傷害罪の2個の罪名に触れることになるため、観念的競合という処理がされます。
②牽連犯とは、犯罪の手段や結果である行為が他の罪名に触れる場合をいい、例えば、住居に侵入して財産を奪うという場合、住居侵入行為が窃盗行為の手段となっているため、牽連犯という処理がされます。
③併合罪とは、確定裁判を経ていない2個以上の罪をいい、原則として観念的競合や牽連犯に当たらない場合には併合罪という処理がされます。

誘拐罪と監禁罪とは、一見すると目的手段関係であるとして②牽連犯に当たるようにも思えますが、過去の裁判例においては③併合罪に当たると判断されました。
①観念的競合、②牽連犯に当たると判断された場合にはその最も重い刑により処断され、③併合罪に当たると判断された場合にはその最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とし(懲役・禁錮刑)、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断されます(罰金刑)。

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