今回と次回は未成年者を連れまわした場合に問われる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が事例を用いて解説致します。
【事例】
未成年者誘拐事件で男を逮捕(千葉県市川警察署)
千葉県市川警察署は、2月3日、当時16歳の女性をSNSを使用して誘い出し、18歳未満の少年であると認識していながら自動車に乗車させて連れ去り、同月5日までの間、自宅等に滞在させた自称システムエンジニアの男(27歳)を3月17日逮捕しました。
男は、SNS上に「家でしたい」等と投稿していた女性に対し,メッセージ機能を使い「話を聞くよ?泊めてあげるからおいでよ」などと送り、自宅付近の駅まで誘い出したとのことです。
16歳女性が自宅に帰らず、連絡も繋がらないことから不審に思った女性の家族が、千葉県市川警察署に届け出をしたことで捜査が開始されました。女性に怪我はないとのことです。
※本件事例は千葉県警察ホームページに掲載された事案を基にしたフィクションです
【解説】
本件事例で逮捕されてしまった男は,どのような罪に問われてしまうのでしょうか。
まず考えられるのは未成年者誘拐罪です。
1 未成年者誘拐罪とは?
未成年者誘拐罪とは、刑法第224条に定められている犯罪です。
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
誘拐と聞くと、テレビドラマなどのイメージから身代金目的に、児童を車などに押し込んで連れ去る犯行などと思う方も少なくないかと思います。
実際にそうした犯罪も発生していますが、そういった事案の場合は車に「押し込む」という暴行を加えて連れ去っていることから、区別するためにも「略取」と言われています。
本件のように「話を聞くよ」や「家に泊めてあげる」などの甘言を用いて児童を誘惑して連れ出した場合が「誘拐」に該当します。
2 未成年者誘拐罪の成立要件
未成年者誘拐罪の成立要件は以下のようになります。
①「未成年者」を
②「誘拐」した
③未成年者であることの認識(故意)
「未成年者」とは、18歳未満の者を指します(民法4条)。
「誘拐」とは、先ほども少し触れましたが、欺罔・誘惑などの手段を用いて、他人をその生活環境から不法に離脱させ、自己又は第三者の事実的支配下に置くことを意味します。
本罪は、未成年者であることを認識していた必要があり、未成年者を成人であると誤認していた場合には、本罪の故意は認められません。
しかし、認識といっても、未成年者の年齢をズバリ言い当てる必要まではないとされ、見た目や言動など何らかの要因から「未成年者かもしれない」と感じた場合(≒未必の故意)でも、未成年と認識していたと認められる場合もあります。
欺罔・誘惑等の行為は、必ずしも被害者本人(未成年者)に対して為される必要はなく、監護者に加えされた場合でも「誘拐」になりえます。
3 未成年者本人の同意があってもだめ?
未成年者誘拐罪は、未成年者本人の同意があったとしても、罪を免れることはできません。
今回の事例では、同意を得た上で16歳の女性という「未成年者」を未成年者であると認識しながら誘い出し、車で移動して自宅に滞在させたと考えられますが行為が、16歳の女性の保護者などには了承を得ていなかったと考えられるため「誘拐」と評価されると考えられます。
4 未成年者誘拐罪の法定刑
未成年者誘拐罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」と規定されています。
罰金刑の規定がないため重い罪であるとも言えます。
次回は、同じく未成年者を連れまわしたことによって問われる可能性のある「青少年健全育成条例」についても併せて解説致します。
【事務所紹介】
今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が未成年者誘拐事件について解説致しました。
未成年者誘拐罪は、たとえ未成年者本人の同意があったとしても、罪を免れるわけではないので、「お互い了承の上だったので問題ないと思った」というような言い分は通用しないので注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部は、平素から刑事事件を数多くに扱う法律事務所です。
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