交際を断ったところ強制わいせつと糾弾された事件

~事案概要~

 Aさんは,千葉県内で行われた大規模イベントでV子さんと出会いました。
 Aさんはその日のうちにV子さんと意気投合,連絡先を交換し頻繁にやり取りをする仲になりました。
 そして,知り合ってから数日後に,V子さんの同意のもと,一緒にホテルに行くことになったのです。
 ホテル内でAさんは,Vさんの服を脱がせて身体を触る,胸を吸うなどの行為を行いましたが,性行為までは行わずにその日は帰宅しました。
 帰り際にAさんはV子さんから告白をされましたが,Aさんは「付き合うことはできない」と,その告白を断りました。
 後日,V子さんの母親からAさんに連絡があり,「合意がなく無理やり服を脱がされ身体を触られたと言っている」「V子はショックで入院してしまった」「そのため海外で仕事をしていたのに緊急で帰国することになったからV子の治療費と慰謝料を支払え」「応じなければ警察に相談して事件にしてもらう」などと言われてしまったのです。

※ 守秘義務の関係から,一部,事実と異なる記載をしています。

~Aさんの刑責~

 気持ちのすれ違いか,認識の違いか,意気投合した相手から突然の訴えを起こされてしまったAさんですが,はたしてどのような罪に問われてしまうのでしょうか。
 あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。

~本件で成立する可能性がある犯罪~
 まず,Aさんが行った「服を脱がせ,身体を触り胸を吸う」という行為から,強制わいせつ罪が挙げられます。

強制わいせつ罪
⇒13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6年以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする。
(刑法第176条)

 ですが,ここで問題となるのは「暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした」という部分です。
 自身の性欲を刺激・興奮させ又は満足させるという性的意向の下で行われたということは明確ですが,今回,Aさんの話しでは,同意の上で行為に及んだとされています。
 また,直接の暴行(殴る,蹴るなど相手に直接有形力を行使すること)のみでなく,間接的な暴行(相手に身の危険を感じさせるほどの力で机を叩く,物を壁や地面に投げつけるなど)も行っていないため,今回のようなケースであれば,一般的には適用されることは多くありません。
 しかし,V子さんが「無理やりされた」という話を警察へ話している場合,警察は「同意はなかった(≒無理やりわいせつな行為をした)」として,強制わいせつ罪の立件を視野に入れ捜査が開始される可能性があります。
 実際に警察に届け出がされた場合,「暴行又は脅迫」と「同意」の有無が最大の争点になる場合がほとんどでしょう。

 また,同じ言葉であっても様々な意味を持つ日本語の性質上,言葉のニュアンスや受け取り方の違い,飲酒の有無などによる状況などによって,自分では「同意してもらえた」と受け取ったが,相手は「拒絶していた」という場合もあるため,同意の有無を明らかにするということは困難な場合がほとんどです。

~本事例における当所の活動~


 Aさんは,V子さんの親御さんからの連絡を受け,警察に被害届を出されたり,逮捕されたりしないよう,穏便に事態が収束することを希望していました。

 今回のように警察が介入する前の「強制わいせつ事件」においては,早い段階で被害者の方との間で示談を取りまとめたり,被害届は出さないという形でまとめたりして,解決できるかどうか重要となります。
 仮に,当人同士の口約束で,「被害届けなどは出さない」という形で,その場は収まったとしても,今後,さらなるトラブルに発展することや事件を蒸し返されてしまうというおそれもあります。
 そのため,示談や合意を取りまとめる際には,法律上有効な文言となっているかどうか,弁護士の目を通しておく必要があります。
 万が一,警察などの捜査機関に届出がされ,事件として認められれば,様々な捜査が行われます。
 そして,その結果,Aさん自身が罪を犯したと認められれば,検察庁に事件が送致されることになり,検察官の判断により起訴されてしまえば前科が付く可能性が高くなります。

 その一方,やっていないことに対してまで罪を認めて示談をする必要まではありません。今回のAさんのように,同意があったと思っていた相手からの訴えの場合,金銭の要求が目的の場合もありますから,一概に判断することは難しいものがあります。

 今回,Aさんご家族からの依頼を受け,当事務所の弁護士がいち早く,V子さんの親御様とコンタクトを取りました。
 そこで,V子さん方の意向を確認するとともに,Aさんとの面談も重ね,事の重大性を認識してもらうとともに,今までの自身の行動を見つめ直す機会にすることも出来ました。
 また,V子さん方と協議を重ねるなかで,AさんとV子さんとで,事件について相当認識の違いがあり,Aさん側の弁護士としても直ちに示談することが適切な事案ではないと判断しました。
そこでVさんのみならず,Aさん側としても警察を巻き込んで解決することが最善と判断し,警察への対応も慎重に行いました。その結果,Aさんが刑事告訴されることも,取調べ等を受けることもなく,また,V子さんとの関係も断絶させる形で解決するに至りました。

 性犯罪とされる事件においては,「その行為がどういった犯罪に該当するのかを見極める,加害者が自身の行為を反省し,二度と同じ過ちを繰り返さないこと,被害者の不安や恐怖,憤りを軽減すること」という点が重要です。一方,被害者とされる方からの要求,要望についても「どの程度受け入れることができるのか/そもそも受け入れるべきなのか」という点は,第三者視点から専門家が判断すべきです。
 ご自身や大切なご家族が,何らかの罪に問われてしまった場合,出来るだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

いち早く弁護士に相談することにより,処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ,その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は日頃より刑事事件を数多く受任し,扱ってきた実績がございますので,どのような事件に関しても安心してご相談頂けます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,札幌市,仙台市,さいたま市,東京都新宿区,八王子市,千葉市,横浜市,名古屋市(本部),大阪市,京都市,神戸市,福岡市など,各地に事務所があり,初回無料法律相談も行っておりますので,お困りの方は,0120-631-881までお気軽にお電話ください。

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