わいせつ物頒布罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部が解説します。
千葉市東区に住む30代男性のAさんは、インターネットを介したわいせつ映像の販売業を営み始めました。
事業を始めたばかりのため、購入を求めてきた顧客は1名しかいませんでしたが、その顧客に対して、電子メールにわいせつな映像のデータを添付して送付しました。
ある日、千葉県東警察署のサイバーパトロールによりAさんが顧客に宛てたメールが引っかかり、Aさんはわいせつ物頒布罪の容疑で逮捕されることになってしまいました。
(フィクションです)
~ わいせつ物頒布等罪 ~
刑法175条1項
わいせつな文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し,又は公然と陳列した者は,2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し,又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も,同様とする。
判例で,「わいせつ」とは,
徒らに性欲を興奮または刺せしめ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道徳観念に反するもの
とされています。
また,ここでいう
・「文書」とは本など文字によって表示されるもの
・「図画」とは写真,絵画など象形的方法によって表示されるもの
・「電磁的記録に係る記録媒体」とはハードディスク,BL・DVD・CD,USBメモリー,フラッシュメモリー,インターネット上のサーバー,ビデオカセットテープなど電磁的記録(情報)が記録・蔵置されているもの
・「その他の物」とは,彫刻物,模擬物など
のことをいいます。
「頒布」とは,不特定又は多数人に対して有償又は無償で交付することをいいます。
そのため,特定の人に対して1回限りで交付することは「頒布」には当たりません。
もっとも,特定の1人に対する1回限りの交付であっても,反復継続して交付する意思があれば,「頒布」に当たりうると判断した裁判例があります。
また,「頒布」と言えるためには,現実に交付・引き渡しがされることが必要であり,例えば,わいせつ物を郵送したが,配送途中の事故により相手方に到達しなかったという場合には,「頒布」には当たらないことになります。
「公然と陳列」とは,不特定又は多数の者が閲覧することができる状態に置くことをいいます。
そのため,特定少数人のみが閲覧できるという状態にすぎない場合には,原則として「公然と陳列」には当たらないことになります。
しかし,特定少数人のみが閲覧できる状態にすぎない場合であっても,これが不特定多数の者を勧誘した結果,たまたま特定少数人のみが閲覧しただけに過ぎないという場合(例えば,わいせつな映像を上映しようと思い,映画館に不特定多数の者を勧誘したが,結果として小数人しか来ず,小数人しか閲覧しなかったという場合)には,例外的に「公然と陳列」に当たりうると判断した裁判例があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,わいせつ物公然陳列罪などをはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。