今回は、あいち刑事事件総合法律事務所が脅迫罪(刑法222条各項)について解説致します。
~事例~
千葉県浦安市在住の42歳、会社員の男性Aさんは、朝の通勤ラッシュ時に、混雑するJR浦安駅構内にて、高校生Vさんのエナメルバッグがすれ違いざまにぶつかったことに腹を立て、高校生Vさんの前に立ち塞がり「痛てーなこの野郎」、「ガキが、舐めてるとボコボコにするぞ?」、などと高校生Vさんを脅しました。
Aさんが詰め寄ってきたことに怯える高校生Vさんの姿を見て,Aさんは憂さが晴れたので、Aさんは去り際に実行する気はなかったが「次あったら覚えておけよ?」などと言ってその場を後にしました。
高校生Vさんは,Aさんが立ち去った後で近くにいた駅員さんに一連の出来事を伝え、駅員さんが浦安警察署に通報したことで捜査が開始しました。
浦安警察署は,駅構内の防犯カメラからAさんを割り出し、数日後、Aさんを脅迫罪で逮捕しました。
※本件事例はフィクションです。
~解説~
脅迫罪(刑法222条)の保護法益(保護対象)は、意思決定の自由です。
ただし、保護法益である意思決定の自由が実際に侵害されたことは必要ではありません。
このような犯罪を、抽象的危険犯と言います。
1項 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の
懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項
と同様とする。
脅迫罪の成立する要件は、
①「生命、身体、自由、名誉又は財産」に対し、
②「害を加える旨を告知」して、
③「人」を、
④「脅迫」したこと、です。
③「人」とは、自然人(生身の人間)に限られ、法人(会社など)は脅迫罪の対象である③「人」には含まれません(大阪高判昭和61・12・16参照)。
④「脅迫」とは、一般人を畏怖(怯えさせる)させるのに足りる害悪を告知することを言います。
相手方がこの告知を認識しさえすればよく、現実に怯えている状態になったことは必ずしも必要ではありません(大判明治43・11・15)。
人を畏怖(怯えさせること)できる程度の害悪の告知かどうかは、告知の内容だけでなく、相手方の性別、年齢、周囲の状況なども考慮して判断されます。
なお、告知の内容に関して重要な問題があります。
告訴や告発などの適法行為の告知が脅迫に該当するか否かです。
この問題点について、判例(大判大正3・12・1参照)は、適法な行為の告知によっても人を畏怖させることは可能であるとしています。
であるとすれば、適法行為(警察への通報、告訴など)の告知も脅迫に該当することとなります。
さらに本件事例では、Aさんは「次あったら覚えておけよ?」と,実行する気はありませんでしたが,高校生Vさんを脅しました。
脅迫罪において告知した害悪を実現する意思の有無は考慮されません。
そのため、本当にやる気はなかったとする弁明が認められる可能性は極めて低いといえます。
~まとめ~
刑事事件は早い段階での法律のプロへの相談が事件の深刻化を防ぎ、早期解決に大きく影響します。
例えば、早期の示談成立による被害届の取り下げや、何もしないまま刑事手続きが進んでは執行猶予が付かない事件に情状弁護(依頼者の刑事処分を軽くすることを目指す弁護活動)を行うことで執行猶予を獲得することなどです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
千葉県浦安市でAさんのように、脅迫罪で逮捕・勾留されてしまうかもしれないという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご連絡ください。
無料相談にて事件の内容を確認した上で、今後の見通しや,なすべき弁護活動についてご説明致します。
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