法律は私たちの生活を規律するものであるため,時代の流れや社会の変化に応じて必要な改正がされています。
近時,大きな改正の動きがあるのは,刑事事件に関する法律です。
法律の改正により,科される刑罰が重くなったり,手続の進み方に変化が生じたりするため,法改正情報を押さえておくことは非常に重要です。
改正法情報は数多ありますが,ここでは特に重要性の高いものを何点かご紹介します。
刑事事件に関する法律は実に多く存在しますが,その代表的なものが刑法と刑事訴訟法です。
簡単に説明しますと,刑法は処罰の対象となる行為とそれに対する刑罰を定めています。
例えば,殺人罪について,刑法199条は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と規定しています。
また,判決で言い渡されることのある執行猶予についての規定も刑法に設けられています。
これに対して刑事訴訟法は,刑事事件の手続,流れについて定めています。
刑事事件は,裁判にかけられるかを決めるまでの「捜査」段階と,裁判が開始してからの「公判」段階に大きく分けることができます。
ここでは,刑法と刑事訴訟法のうち,特に重要な法改正情報をお伝えします。
平成29年7月から施行されている改正刑法のもとでは,性犯罪の厳罰化傾向が見られます。
改正によって大幅に変わった点は,次の2点です。
まず1点目は,性犯罪の非親告罪化です。
親告罪とは,被害者の告訴,すなわち加害者に対して刑事処罰を求める意思表示がなければ,検察官に起訴されて裁判になることがない犯罪です。
これまで,強制わいせつ罪や強姦罪は親告罪とされていました。
その理由は,裁判になって公開の法廷で証言を行うことを望まない被害者もいるため,被害者の意に反して裁判を行うのが望ましくないことがあるためです。
それゆえ,これまでは被害者に対して謝罪を行い,被害弁償をすることで示談が成立した場合,被害者が告訴を取りやめて裁判にならない余地がありました。
しかし,法改正により告訴が不要となれば,被害者との示談が成立しただけでは,裁判となるリスクを回避できなくなる可能性が生じます。
もちろん,被害者との示談が成立したことは,検察官が起訴をするかを決めるうえで重要な事情ではあるのですが,告訴の有無だけで起訴が決まることにはならなくなったことに注意が必要です。
また,強姦罪が強制性交等罪に改められたことで,法定刑が3年以上の懲役から5年以上の懲役になったことも大きな変更点になります。
現行法上,執行猶予(有罪であっても,すぐには刑務所に収容されずに済む制度のことを言います。一定期間,犯罪を行わなければ,刑罰は免除されます。)は3年以下の懲役の場合にしかつけられないのですが,刑の下限が5年となると,特別の減軽事情がない限り,執行猶予はつけられないことになります。
次に刑事訴訟法の改正情報ですが,取調べの録音,録画という大きな変化を挙げることができます。
取調べには弁護士が立ち会うことができないため,被疑者(犯罪の嫌疑がかけられた人のことを言います。)はたった一人で警察官,検察官からの取調べを受けなくてはなりません。
それゆえ,暴力を用いたり,証拠が不十分なまま犯人と決めつけたりする違法,不適切な取調べがされてしまった場合,密室で行われた事実を裁判で証明するのは極めて困難になります。
取調べの録音,録画がされると,どのような取調べがされたかは一目瞭然であるため,違法,不適切な取調べを抑制するとともに,そのような取調べで作成された調書が裁判で証拠に使わせないという効果があります。
取調べの録音,録画は平成31年までに法律上の制度として施行されますが,現在でも一部の事件について運用が始まっています。
もっとも,法律上の施行がされても,その対象は裁判員事件等のごく一部の事件に止まっていることに留意する必要があります。
このように,刑罰の重さや取調べ手続について,重要な改正の動きがあります。
科せられる刑や手続の流れが変更された場合,当然,弁護方針にも違いが生じてきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所千葉支部では,刑事事件専門の弁護士事務所として,最新の法改正情報を踏まえた弁護活動を行います。
法改正の情報,動向で気がかりな点がある場合は,法律相談時にお気軽にお尋ねください。